魔王軍幹部 ソルセルリーの脅威
最初に動いたのはソルセルリーだった。
「"魔弾"」
ソルセルリーの代名詞、"魔弾"。その効果は結晶化した魔力を相手に飛ばす、単純な魔法。
だが、そんな攻撃でも、鍛え上げられた兵士数百人を貫通する威力がある。
椿は即座に"次元天蓋"を二枚展開するが、一枚目は簡単に貫通されるも、二枚目までに威力が減衰し、二枚目の結界を貫いただけで、椿には届かなかった。
「ふむ。随分と厚着じゃないか、冒険者よ」
ソルセルリーはそう言いながら更に"魔弾"を追加する。その数、数千。
(やばい!)
自分は大丈夫でも、後ろで守っているエミリーたちに被害が出ると判断して、椿は"次元天蓋"をエミリーたちにもう三枚貼り付けると、結界ごと転移する準備を始める。
座標は……
「やらせると思うか?」
「ちっ!」
転移を発動する前にソルセルリーは"魔弾"を発射する。
「"溶熱岩牙"!」
炎、地属性複合魔法"溶熱岩牙"簡単な話、溶岩の塊を発射する魔法だ。
溶岩で数本は溶かせたが、それでもまだ被害は出る。
「"疾風""死を呼ぶ死神の嵐"」
超音速機動で飛びながら、最上級風属性魔法で"魔弾"の標準をずらしながらソルセルリーへの接近を試みる。
「ふむ。なかなかやるな冒険者よ。最上級魔法もお手の物か。"砂嵐"」
地、風属性複合魔法"砂嵐"で"死を呼ぶ死神の嵐"の効果を減衰しにかかるソルセルリー。
そのタイミングを狙って椿はソルセルリーの後ろに転移し、回し蹴りを繰り出す。
だが、
「転移からタイムラグがあるな。防ぐのは容易だぞ?」
椿の足はソルセルリーに掴まれ、
「足に直接撃ち込んだらどうなるだろうな?"魔弾"」
椿の足は吹き飛んだ。
「"移天"」
空間魔法"移天"任意の場所に自分を転移する魔法だ。
空間魔法の中でも最下位の魔法で、範囲も自分だけだが、それで十分だった。
「"絶象""天在"」
吹き飛ばされた足を再生しながら椿はエミリーたちを安全な場所に転移させる。
そして、このままソルセルリーと少し距離をとる。
魔法使いとの戦いでは距離をとるのは愚策としか言いようがないが、椿は動体視力も優れているので、遠距離から回避しながら魔法を放つことが可能だ。
「なるほど。常軌を逸脱した回復魔法か。いや、再生魔法と言った方がいいか?足を消し飛ばしても無傷で再生するとは使える魔法のバリエーションは悔しいがお前の方が上みたいだな」
ソルセルリーは素直に賞賛の言葉を口にする。
「完璧に合成された複合魔法。それに今まで
「お前程度が俺の部下?寝言は寝て言え。いや、寝てても言うな」
そのまましばらく睨み合い、
「"神速"」
ソルセルリーが動いた。
使用したのは'疾風"の上位互換魔法"神速"だ。
"疾風"よりもなお速い速度で椿に肉発するも、
「!?"次元天蓋"」
咄嗟に結界を展開した瞬間に、ソルセルリーの蹴りによって結界が少し凹んだ。
「ただの蹴りでこれかよ……"終焉の永久凍土"」
悪態をつきながらも周囲一帯を凍てつかせる。
既にパーティー会場の面影は無く、あるのは戦いの後だけ。
だが、まだ戦いは終わっていない。
「やはり守るよな。"魔弾"」
再度数千の"魔弾"がソルセルリーから発射される。
「"英雄の加護""瞬光"」
全てのステータスを上昇させる支援魔法を使いながら、昇華魔法によって知覚能力を昇華させる。
煩わしい結界を解除してから全ての"魔弾"を回避、または弾きながら対処する。
だが、ソルセルリーは椿を逃がそうとしなかった。
「禁域解放」
悪魔族の奥の手を切ってきた。
(ここでか!)
あまりにも速い発動に椿は内心悪態をつく。
椿の予想ではもう少し後に発動させるものだと思っていたが、想像よりも速かった。
「さぁさぁ!まだまだ続くぞ!」
そう言いながらソルセルリーは"魔弾"を再度発動する。その数、ざっと数万。
「巫山戯ろ。"天変身異"」
数万の"魔弾"を変身魔法で回避しやすい形状に変形させてから回避を続ける。
「"魔弾"だけだと思うなよ?」
"魔弾"と同時にソルセルリーも仕掛けてくる。
椿は"魔弾"を回避すると、ソルセルリーが攻撃をする瞬間に変身魔法を解除して、足に金剛体を発動しながら蹴りを放つ。
「ほう。いい判断だ」
ソルセルリーが放った掌底と、椿の蹴りが衝突し、その衝撃を相殺する。
「"猛虎"」
そして、ソルセルリーが離れる前に椿は周囲に衝撃波を発生させる。
ソルセルリーが吹き飛ばされている隙に、剣を持ち、攻撃を仕掛ける。
「剣の腕も中々だな」
だが、ソルセルリーは剣を完璧に回避した。
(やっぱ、虎徹みたいには無理か)
剣術と抜刀術はかなり練習したが、それでも技術だけでは虎徹にも花恋にも敵わない。
相手は魔法使いだから接近戦ならとも何度も考えたが、椿と同じである程度は接近戦にも対応出来るみたいだ。
「"極滅の業火"」
ソルセルリーの手のひらから発射される地獄の業火を紙一重で交わしながら再度距離をとる。
「"瞬滅の滝烈"」
埒が明かない。
両者とも、魔法を放ってもお互いが確実に回避する。
決定打が見つからない。
「"魔弾"」
そして椿にとって真に厄介なのはこの"魔弾"だ。
禁域解放の効果で数万という数発射される魔法は実に厄介だと言える。
そして"魔弾"に付与された"呪言"。
全ての"魔弾"に付与されているわけではないが、それでも数百は付与されている。
(さて、そろそろ切るか?)
まだトドメをさせると確定した訳では無いが、椿にはソルセルリーを一撃で屠る手段がある。
だが、その攻撃は命中率が低く、攻撃速度もお世辞にも速いとは言えない。
(まだだな)
何より、椿は限界突破すら発動させていない。
「なぁ、そろそろ諦めないか?」
と、今まで攻撃しかしなかったソルセルリーが話しかけてきた。
「なんだ?突然」
「なに。お前の力はよくわかった。俺には届かずとも魔王軍幹部の中でも十分に通じる力だ。実際、この体を乗っ取る前の俺だったら確実に殺られていただろうからな」
「で、何が言いたい?」
「俺に勝つことを諦めて俺の下につけ。今なら誓約もそこそこに部下として生かしてやるぞ?」
おそらく、従わなければエミリーたちを殺すと言って人質にするつもりだろうが、
「一つ、いいか?」
「ん?」
「なんで、格下に従わなければならない?」
ソルセルリーはそんな椿の言葉に呆気に取られた。
「生憎と、俺は弱者に従う趣味は無いんでね」
そう言いながら魔力をさらに高める。
「たかだか人間が。己の言葉に後悔しながら死ね」
「それはこっちのセリフだよ。限界突破」
今まで使わなかった切り札を使用しながら宣戦布告する。
「言っておくぞ?勝つのは俺だ。"樹海生成"」
瞬間、周囲が霧に包まれた。
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