迷い込んだ場所
最低限の光が確保された、洞窟の中で魔法陣が展開されたかと思えば、一人の男が現れた。
その男、上里 椿は、現在は周囲を"索敵"を使用して警戒しつつ、現状確認をおこなっていた。
「とりあえず、王国で貰った|魔法道具》マジックアイテム》は全部無事。装備や防具は無事だから、次は現在地の確認」
そう言って周囲を見るが、洞窟内なので天然の石の壁が存在するだけ。
「体が冷えてる訳じゃないから、今は火はいらない。余計に火を出して悪戯に酸素を消耗するわけにはいかない。水は魔法でなんとかなる。食料は……」
そして椿は腰にかけてあったポーチの中を見る。
「マジックポーションが2本とヒールポーションが1本。カロリーメイトもどきが3日分、か」
ちなみにこのカロリーメイトもどき。一つで一日分の栄養を確保出来、食後24時間はお腹が減りにくいという利点がある。
ちなみに椿にも正式名称は分からない。
ウルに出発する前に配られただけだから。
「僕は、リボーンにおそらくどこかに転移させられた。一応咄嗟に"鑑定"は使ったけど、
ポーチの中には地図も入っていないので仮に洞窟の外に出られても場所がわからない。
まあ洞窟の外が森の中とかなら確実にわからないだろうが。
それは近くの街まで辿り着いてからでいいかと楽観的に考える。
こんなところであれこれ考えていても無駄だと思い、椿はとりあえずどちらかに向かって歩きだそうと立ち上がった瞬間、"索敵"に何かが引っかかった。
ちなみにこの洞窟は一本道で、後ろから一体何かがこちらに向かってくるのを察知した。
「とりあえず、隠れるか。"隠蔽者"」
そう言いながら椿は中級光属性魔法"隠蔽者"を使用して、姿を隠した。
そうしてしばらく待っていると、"索敵"に反応した対象が姿を現した。
それは際どい服を着て、背中に小さな羽があり、おしりからは尻尾がはえている女の子。
サキュバスだった。
「!"雷槍"!」
椿がサキュバスの存在に気づくと、すぐさま中級風属性魔法"雷槍"をサキュバスに向けて放った。
しかし、サキュバスは見えない場所から飛んできた魔法にもかかわらず、"雷槍"を回避してしまった。
「やっぱり無理か……」
そう言いながら椿はその場から離脱する。
すると、先程まで椿がいた場所が淡く光った。
サキュバスから姿が見えていないのに、椿が魔法を放った理由。それはサキュバスはそもそも生命感知という感知系の技能を種族として保有しているからだ。
そもそも"隠蔽者"は姿を消すだけで、感知系の技能からは逃れられない。
簡単に例えると、監視カメラには映らないが、赤外線には反応するということ。
そして淡く光ったのはサキュバスの攻撃。"魅了"だ。
この"魅了"に当たると、サキュバスしか目に入らなくなる。そしてそれが出来ればサキュバスの第二の魔法"媚法"によってサキュバス、または仲間の異性に性的に襲いかかってくるという能力だ。
ちなみにサキュバスの詳細は、休憩時間の合間に本で読んだ。
「一応精神も高いし、精神攻撃耐性(中)もあるけど……」
正直、"媚法"は兎も角、"魅了"は精神攻撃なので、防げる可能性はあるが、絶対ではない。
防げない可能性も考慮して慎重に戦わないといけない。
それに今の椿はリボーン戦から時間が経っていない。MPが回復していないのだ。
故に長期戦は出来ない。
なら、
「短期戦だ。"放電"!」
椿が放った放電は中級の魔法で、自分を中心とした周囲に電撃を放つ魔法だ。
これによって痺れたサキュバスに
「"水刃"」
初級の水魔法で首をはねることに成功した。
「はぁ。なんだか疲れた」
サキュバスが出る洞窟だとは思いもせず、思わずその場に座り込んでしまう。
「……とりあえず、サキュバスが来た方が洞窟の奥だと思っていいかな」
そう言うと椿は立ち上がり、サキュバスが来た方向とは反対側に歩き出した。
それから2日が経過した。
現在、椿はピンチに陥っていた。
まず、サキュバスが強くなっていっている。
明らかにはじめのサキュバスよりも強い。
最近、サキュバスが攻撃魔法まで使用してきた。
それにこの洞窟、まるでダンジョンにいるかのように精神攻撃系のトラップが設置している。
しかも"鑑定"を使用して調べたところ、対象を発情させるトラップが多い。
しかも度重なるサキュバスからの攻撃により、椿のステータスは上がっていた。
『
名前:上里 椿
年齢:16歳
性別:男
Lv.12
MP:2000
筋力:40
体力:45
耐久:60
敏捷:65
魔力:450
精神:780
技能:
全魔法適性
想像構成
高速詠唱
詠唱省略
高速魔力回復
精神攻撃耐性(大)
空腹耐性(小)
気配感知
魔力感知
不眠不休
精神補正
言語理解
』
となった。
リボーン戦で少し成長したと思ったが、この2日の成長速度が目まぐるしい。
技能も2つ増えたし。
それにしても
「またサキュバス。ここにはサキュバスしかいないのかな」
この2日、サキュバスしか見なかった。
ちなみに精神攻撃耐性(大)のおかげで'魅了"は無効化出来る。
そして精神補正のおかげで洞窟のトラップやサキュバスの"媚法"にも抗えている。
そして空腹耐性のおかげであと一つのカロリーメイトもどきでもあと2日はこの状態を維持できそうである。
それに不眠不休のおかげで寝ているすきに襲われる、なんてことも無くなった。
ちなみに不眠不休は寝なくてもいいだけで、眠れなくなる訳では無い。
ちなみに途中、椿は何度も引き返そうとし、一度だけ引き返してみたのだが、洞窟の道が防がれていた。
というわけで椿は今は先に進むしかないのだ。
もしそろそろサキュバスが鬱陶しく感じても。
「はい。"雷槍"」
目の前に現れたサキュバスを慣れた手つきで倒す。
2日も戦っていればそろそろパターンもわかってくる。
初日に比べると格段に速い速度で奥に向かって歩く。
それからまた一日歩き、ついに椿はずっと一本道だった洞窟から、開けた場所に出ることに成功した。
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