転校したら異世界に召喚されました

VS.魔王軍幹部 リボーン 後編

「"獄滝""獄嵐"」

　水属性と風属性の上級魔法を椿はリボーンに向けて発射する。

「速すぎる。まさか口頭詠唱？いえ、"獄滝"はまだわかりますが"獄嵐"まで？」

　リボーンはそう言いながらも目の前に障壁を展開し、防いでるすきに自分を守護するための結界を展開する。

　しかし、

「「"絶撃"！！」」

　ウルと光の斬撃魔法がリボーンに襲いかかる。

「無駄です！この結界はその程度では破れません！」

　事実、今の椿よりも遥かに多いMPと高い魔力を誇るリボーンが展開した結界は壊れなかったが、

「ヒビは入った！」

　そこへ平一が殴りかかる。

「うぉぉぉぉ！"剛力"！」

　魔法で強化された拳をもって結界を殴ると、その結界は破壊された。

「上里の言う通りならあいつは継続的にMPを消費している。ウルさんの限界突破が続いているうちに突破するぞ！」

　翔がそう言いながら片手剣を右手に持ち、投げナイフを生成する腕輪をつけている左手に投げナイフを生成しながら人形に攻撃をしかける。

「無駄です。この人形はただの人形ではありません！魂魄が無事ならば何度でも復活しますよ！」

「なら、突破するよ！」

　ふと、リボーンが聞いたことない声が聞こえた。

　先程の魔法の少年ではないと。

　その答えは今まで戦力温存の名目で控えていた残りの騎士と勇者一行の女の子たちだ。

「上里くん！あわせて！」

「了解！松山さん！」

　二人は人形に向かって手のひらを向けるものの

「無駄です！魂魄を消滅させる魔法はMPの消費が激しいはずです！あなたたちでは一斉に消滅はできません！」

「なら、これはどうかな？"魔力増強（大）"！」

　それは第三者からの支援魔法。

　それを成したのは支援魔法に強い適性を持っている藤井 琉奈だった。

「支援魔法！？ですが、分散させれば……」

「やらせるか！」

　そこへウルを含めた騎士総勢6名に加え、光と平一がリボーンに攻撃をしかける。

　そしてこの隙に傀儡人形を閉じ込める者がいた。

「"天蓋"」

　結界魔法に特に適性がある堀井 美穂だ。

　彼女はリボーンが展開した閉じ込めるための結界、上級魔法"天蓋"を未熟な身なれど、縮小版だが見事使用してみせた。

　そしてその隙に

「「"滅魂"！」」

　椿と翼の上級闇属性魔法"滅魂"によって傀儡人形に閉じ込められていた魂魄は完全に消滅された。

「ぐわっ」

　傀儡人形という厄介な敵はいなくなったものの、いなくなった分リボーンにキャパシティの余裕ができ、ついに騎士の一人が攻撃を受けた。

　実は最初に椿が"聖者の加護"を施したのはウルと光と平一と翔だけであり、他の女の子たちや騎士にはまだ"聖者の加護"は施していない。

　だが、回復役は他にいる。

「"聖女の祈り"」

　倒れた騎士に回復を施したのは安藤 優花。

　いつもはおどおどしていて前に出ないが、今回は誰も死んでほしくない！その一心で戦場に身を投じる。

「"聖者の加護"！」

　椿の発動したのよりも強力な回復が訪れる。

　そして

「"英雄の加護"！」

　琉奈が全体支援魔法"英雄の加護"を発動させる。

　この魔法は範囲内の味方の全スペックを上昇させる上級魔法だ。

「いくぞ！限界突破！！」

　さらに光までもが虎の子の限界突破を使用する。

　ウルは限界突破の制限時間が訪れようとしていたが、

「優花ちゃん！ウルさんの限界突破の効果が無くなりそう！」

「わ、わかった。えっと……"聖復"」

　上級回復魔法"聖復"。制限時間のある技能やアイテムの制限時間を引き伸ばす魔法だ。

　もちろんデメリットはあるが、それを気にするウルではないだろう。

「ウルさん！」

「ああ。一気に畳み掛けるぞ光！」

　限界突破状態のウルと光がリボーンに再度攻撃を開始し、リボーンが人形を取り出そうとすれば、

「させるか！」

「やらせないよ！」

　翔と二宗 奈々の投げナイフがその手に炸裂する。

「くっ！煩わしい！」

　生徒10人に加えて騎士7名、総勢17名から集中攻撃を受け、さすがのリボーンも追い詰められていた。

　限界突破状態の人間が2人に加え、それなりの実力者が7名が接近戦で襲いかかってくる。

　たとえ手傷を負わせても後ろにいる術師が即座に回復させる。

　それに接近戦で仕掛けてくるものたちの足りない能力も後ろから支援魔法で補助してくる。

　合間に攻撃魔法が飛んでき、援軍の傀儡人形を取り出そうにも、その隙に投げナイフが幾つも飛来し、たとえ取り出せても即座に閉じ込められ、魂魄が消滅させられる。

「総員！次で決めるぞ！」

　そしてウルの号令と共に

「"極滅の業火"！」

　椿がウルたちの後ろからリボーンに向かって最上級火属性魔法"極滅の業火"を放った。

「今！」

　ダメージと目隠しの目的で放った"極滅の業火"に続いて、ウルたち騎士、光と平一が一斉攻撃を仕掛けた。

「「「「「「「"絶撃"！」」」」」」」

「"光破"！」

「"振動波"！」

　その一斉攻撃をその身に受けたリボーンはついに全員をこの場に閉じ込めていた結界を解除した。

　生徒たちが喜びを露わにする中、

「総員！油断するな。まだ起き上がってくる可能性があるぞ！」

　ウルのその言葉と同時に、翔は中に向かって投げナイフを投擲し、蕾は牽制用の初級魔法"火球"を放った。

「ウルさん！あの中に、気配感知に反応が！」

　蕾のその言葉に誰もが悟った。

　あいつはまだ生きている。

「全員急いで王都に帰還せよ！今ならまだ全員で生きて帰れる！」

　全員にそう言ったウルが、直後吹き飛ばされた。

「！？ウルさん！」

　光がウルを心配して声を上げるが、それもしょうがないことだろう。

「高円寺くん。今はウルさんよりもあれに集中しないと」

　椿はそう言って光の隣に立つと、魔力を集中させる。

　本能で感じ取った。これは、やばい。

「やれやれ。結界を展開していたとはいえ、ここまで私を追い詰めるとは。正直侮ってましたよ」

　そんなことを言いながら現れたのはリボーンだった。

「とくにそこの魔法使いの少年。上級どころか最上級まで行使してみせるとは……。想像以上に強力だったみたいですね」

　リボーンが椿に対する警戒度を上げているが、椿は最上級魔法まで使用したおかげで既にMPがほとんどからだ。

「だから、あなただけでも消えてもらうことにしました」

　何を！椿がそういう前に、リボーンは誰にも反応できない速度で椿に接近した。

「だ、ダメ！逃げて！」

　蕾が未来感知で何かを感じ取ったのだろうが、それを気にする暇は椿にはなかった。

「それでは、さようなら」

　リボーンが椿に触れた瞬間、椿が光ったかと思えば、次の瞬間、椿が立っていた場所には誰もいなくなっていた。