第196話 ハイダック05
オルドゥースの神アブソースは地の神だが、他の神と違って人間に力を貸すこともある。オルドゥースの神は信者の願いを叶えてくれる。オルドゥースの神は人間の身体を借りて現れることができる。オルドゥースの神は人を助ける代わりに、その人が大切に思っているものを奪おうとする。オルドゥースの神は奪ったものを捧げることで力を貸してくれる。
お嬢様はオルドゥースの神にお願いすると言っていたが、本当にオルドゥースは人間に力を貸すことなどあるのだろうか。それも含めて確認するためオルドゥース、オルドゥアズ教の信者にお願いするつもりだそうだ。お嬢様はオルドゥアズ教信者と連絡を取るために手紙を書き始め、書店でもらった紹介状のお店に向かうように考えた。しかしこのところのお嬢様の様子に外出はなかなか許されない。そこでまずはオルネラがその店を訪ねることになった。
その夜、オルネラは書店でもらった小さな人形を手に取って見つめる。
(幸運の人形か…… 私には縁のない物だな)
オルネラは田舎の商家の出で、そこそこ裕福に育ってきたのだが、子だくさんのため奉公に出された。実家にはもう帰ることもないだろうし子爵家の皆さんはとてもいいご家族でメイドをいじめたりなどという事はなかった。しかし今後の自分の境遇を考えるといつまでもメイドでいるわけにもいかず、誰かに見初められるか子爵様の気に入った男性に嫁入りをするという事になるのだろう。そんな事を考えながら小さな人形に話しかける。
「私はこのままでいいのかな?」
ばかばかしいと思いながら蜘蛛の人形をベッドの横に置き床につく。
そしてオルネラは夢を見た。内容は詳しく覚えていないがなんだか黒い服を着た人たちがたくさん祈りを捧げているようだった。祭壇の先には一人の人物がいて、同じように黒いフードに見を包んでいたが他の人たちと違うのはその人の服にだけ黒い蜘蛛の模様が入っていた。
祭壇にいる男が何かを叫んでいる。遠くて聞き取れない。オルネラは気になって近づこうとするが前に進めない。
その時、男の目が赤く光ったように見えた。次の瞬間黒いローブから蜘蛛の足が生えた。オルネラが驚いていると近くにいるローブの男たちを蜘蛛の足で突き刺し、持ち上げ滴る血を飲みながら笑う、いや笑ったように見えた。その男の顔はひとのようなものではあっだ、人のものではなかった。そして突き刺した男の一人を齧り始めた。
アリアナは恐ろしくてたまらなかった。夢の中で気絶し現実で目を覚ましたオルネラは急ぎアリシア嬢の元へ向かい夢の話をするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます