第195話 ハイダック04
店主はそんなお嬢様の事を気遣って色々と親切にしたようだ。お嬢様がいつも来ていたのは三週間に一回程度だったが、お嬢様は毎回違う本を注文していた。お嬢様は本を数冊購入していったらしく、どれも難解なものばかりだったと言っていた。
そしてオルネラが持っている本を見ると目つきが変わった。オルネラがお嬢様が購入した本に書かれた像を探してほしいとお嬢様に頼まれたのだと伝えた。
「……それはここで手に入るのですか?」
「そうね…… もし欲しいなら私が紹介状を書いてあげてもいいわよ? 私、お得意さんにいろいろコネがあるの。それで、本当にそれをお望みなの? え? なになに? へぇー、珍しいわね、こんなものを欲しがるなんて。これ、本当はね、あんまり出回らないんだけど、でもあなた可愛いから特別に紹介してあげるわ」
「え? いえ、私は…… お嬢様に相談してから……」
「遠慮しないで、ほら、これ持って行って。これはあなたに。お嬢様にも内緒よ、きっとあなたに幸運が訪れるわ、それとこの紹介状を持って行きなさい、まあお嬢様と相談してもいいわね。まあ、しっかり相談なさい」
オルネラは店主に半ば強引に小さな蜘蛛の形をした人形と紹介状を渡され、屋敷に戻っていった。
(ああ、まさかフィンダートのお嬢様が引っかかるなんてついてるわねえ、あのお嬢様は私の好みじゃないけど、まあいいわ、あの子に恩を売っておいて損はないでしょう。それにしても、あの子が持っていた本が本物だったなんてねえ。それにあの子、オルネラって言ったかしら、あの子は抱えているわね、使えそうね)
オルネラが去った後、店主はニヤリと笑った。
オルネラは屋敷に戻るとさっそくお嬢様の部屋に向かった。
部屋に入るとお嬢様は真剣な表情をしていた。
お嬢様はオルネラが戻ってくるのを待っており、本について話をした。
お嬢様が言うには隣にアンジーという少女がいて、この本から現れて本の解説してくれているのだそうだ。オルネラが申し訳なさそうに姿が見えないというと、お嬢様は気にしていないと言ってくれた。
お嬢様の話によるとこの本に描かれている絵は実在しているもので、オルドゥースの神アブソースによって描かれたものなのだそうだ。そしてその像は実在するらしい。オルドゥースの神は人の身体を借りて現れることがある。オルドゥースの神は人間の願いを聞き届けてくれる。そして代償を求める。お嬢様はその対価として大切なものを捧げなければならないのだが、何を捧げればいいのかわからないため困っていた。そこでお嬢様はオルドゥースの神の信者であるオルディアス教に接触を求めていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます