第158話 タラート13
ついに戦いが始まる。
レイスはまず、結界を発動する。そして、全軍に攻撃命令を出す。それを見た王国軍から矢による攻撃が開始される。しかし、結界に阻まれて届くことはない。
レイスは弓兵部隊に矢を放つように指示を出しさらに魔法部隊も詠唱を開始させる。それを受けた王国軍は、領軍の思惑を理解すると盾を構え前進を始めた。
両軍がぶつかると激しい乱戦となる。
領軍は結界の維持に集中する。結界のおかげで、王国軍の攻撃はほとんど通らなかった。結界の外からの攻撃を防ぎつつ王国軍を少しずつ押し込んでいく。やがて、レイスの狙い通りに王国軍が後退を始める。
領軍は、一度追撃を止める。レイスは王国の兵力をできるだけ減らしたかったため、退却する王国兵を深追いすることなく、その場で足止めをする作戦をとる。ある程度時間が経過してから再び動き出すが今度は、徐々に距離を詰めていく。
領軍は王国兵が一度離れるために引いたと判断したところで一気に攻勢を強める。王国兵はレイスの勢いに飲まれると次々と倒れていく。そして、王国兵の士気が崩壊し始めると、敗走が始まった。領軍は逃げる王国兵を追わず、その場に留まる。
対人戦では領軍が勝利したように見えた。領軍の兵たちは歓喜の声に包まれる。
しばらくすると王国側から魔物の一団が姿を見せる。中には領門の警備隊の甲冑をつけている者の姿もある。
(なんということだ。本当に王軍は死者を操るというのか……)
レイスは驚きつつも冷静さを失わないように注意を払う。
そしてその魔物の一団の後ろに黒いモヤがひと際大きく渦巻く中に黒い甲冑姿の騎士が赤い目を光らせ歩み寄ってくる姿を確認する。
黒い甲冑に見を包んだ騎士が目にとまる。王国軍の本陣にその姿がある。あれがクロードなのか?
レイスはその姿を見て驚愕する。以前のクロードの姿とは全く違っているからだ。クロードは、レイスと目が合うと口元を歪める。
そして、大声で叫ぶ。それはまるで、戦場にいるすべての人間に向けて語りかけているようだった。
「我が名はクロード! このラステア王国の王である。この場にいるすべての者に告げる。今すぐ武器を捨て投降せよ!」
それは、この場にいるすべての人間の心に響き渡った。
「何が王だ! 魔物に乗っ取られた王国などもはや王国とは呼べぬ!! クロード王を騙る化物め! 我らの正義をしかと見届けるがよい!」
クランス王子が叫ぶ。
それを聞いたクロードは、声を上げて笑う。クロードの周りにいる魔物たちも笑いだす。 その様子を見たレイスは、何か嫌な予感を覚える。
(あれはまさか……。いやそんなはずはない。ありえない……)
レイスは動揺を隠すことができないでいると、クロードがレイスに向かって叫ぶ。
グルオオオオ!!!!!!
レイスは、耳を塞ぎたくなる衝動を抑えながら、かろうじて態勢を維持をする。
そして、ゆっくりとクロードの方へと歩き始めた。
レイスが近づいてくることを確認したクロードは、手を上げ振り下ろすと、それを合図に魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。
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