第155話 タラート10

レイス卿とクランスは今後の動きについて相談する。


「そういえば、今回の件でレイス領から調査団が派遣されたそうだが、彼らは今どこに?」

「ああ、確か鉱山都市にいるはずです。もう到着した頃かと」

「有用な遺物が発見されればよいのだが……」

「鉱山都市の方は、彼らに任せておけばいいでしょう。問題は領境の門のほうです。先ほどの報告では、防御魔法も破られたそうです。それほどの規模の魔法攻撃ができる相手となるとかなり厄介です。こちらもそれなりの装備が必要になってきます」

 レイスは、考え込むような仕草をしながら言った。


「やはり、遺物を手に入れるしかないだろうな。だが、あれは……」

「わかっていますよ。あれは簡単に手に入るものではない。ですが、なんとかしなければなりません」

「そうだな……」

 二人が悩んでいると部屋の扉がノックされる。


「失礼します。領主様、お客様がお見えになっておりますが」

「客だと? 誰だ? 今日は来客の予定はなかったはずなのだが……」

「はい、なんでも領都の冒険者ギルドマスターのギオルゴと名乗っておりまして、面会を希望されております」

「ふむ、冒険者のギルドマスターか…… わかった通してくれ」

 レイスがそういうと部屋に一人の男が入ってくる。年齢は40代半ばくらいで、体格の良い男性であった。


「これは初めまして。私はギオルゴといいます。レイス様とお見受け致しましたが、よろしいですか?」

「ああ、私がこの領を治めているレイスという。それで貴殿は何用で参られたのだ?」

「実は、領境の門で起こっていることについて、ご相談したいことがあり、こちらに伺わせて頂きました」

「なに!? それはどういうことだ! なぜそのことを?」

「我々には独自の情報網がございます。併せて、クランス王子、あなたが話を進めている情報ギルドともつながっております」

「うむ、そうか。それでその情報というのは確かなものなのか?」

「はい、間違いありません。既に領堺でも戦闘が始まっております」

 それを聞いたレイスは驚きつつも冷静さを保っていた。


「なるほど……、状況は理解した。して、その情報を持ってきたのは貴殿一人か?」

「いえ、私の部下を2名連れてきております。今は待機しておりますが報告のために同席しても構いませんか?」

「構わない。では、早速話を聞かせてもらおうか」

「はっ!」

 そういうと、ギオルゴは部下二人を招き入れ、状況を説明し始めた。


「まず領堺の状況を報告します。現在、王都側の門は破壊されています。また、王都への街道上に黒い霧のようなものが漂っており、近づくことができなくなっています。そのため、近隣から援軍を送ることはできません」

「なんと、そこまで進行していたか。では、このまま放っておくと領都まで何もせず攻め込まれてしまうではないか」

レイスは不安そうな顔でギオルゴを睨みつける。


「はい。その件はまた後ほど。ここからの情報が問題です、あの黒いモヤについての情報です。黒いモヤの霧に触れたものは、生気を奪われていきます。それは人間だけでなく魔物も同じです。そして、黒いモヤに包まれた人間は理性を失い、まるで操り人形のように命令に従うようになります。今のところ確認できたのは兵士だけですが、そうなるとここに向かう途中の村や町も時間の問題かもしれません」

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