第154話 レイス領堺03
ローブの男は領門の前に立ち、部下たちに指示を出すと部下たちも同じように黒いモヤを纏った状態で歩き進む。
領門内に戻った男はクロード王に報告をする。
「クロード様、領門内の敵はすべて排除しました」
「ご苦労」
「では私はこれで失礼します。カーミラ様に報告をしてまいります」
ローブの男は一礼して、領門から出て行った。
領門前に残ったクロード王は、黒い鎖で縛られていた兵士を開放する。解放された兵士は虚ろな目であたりを彷徨いはじめる。クロード王の声に反応して兵士たちが動き始める。目指す場所は領都タラートである。
領門から出た男は、領門の前で待っていた馬車に乗り込むと、フードを脱ぐ。
(まあ予定通りか。ここでクロードがどうなるのか、まあ俺の知ったこっちゃあないけどな)
フードを脱いだ男は、顔に大きな傷跡がある、30代後半くらいの男だった。
その男の表情はどこか楽しげに見えた。ローブの男が乗り込んだ後、馬を走らせていた御者が声をかける。その男も黒いモヤを身にまとっていた。
「旦那、これからどちらに向かわれますか?」
「とりあえず、このまま王都に向かう。頼む」
「へい、わかりました」
いつの間にか黒いローブの男の乗った馬車の周りには彼の部下が取り巻き並走している。御者は驚く様子もなく、いつもの光景らしかった。
森の中を疾走する馬車とまわりの一団。黒いローブの男は、部下たちに向かって指示を出す。
部下たちの身体から黒い霧のようなものが発生し、それが黒いローブの男の周りを取り囲むように集まり形を作っていく。
やがてそれぞれが黒い全身に身を包んだ狼のような姿になり馬車を取り囲んでいく。
黒いローブの男を乗せた馬車は、王都に向かって走り続ける。
――――――
一方、領堺への王軍の攻撃の知らせを受けたレイス領タラートでは、すぐに軍を編成しタラート外周へ兵を配置した。軍勢は全部で1000人を超える大軍だった。敵王軍の到着まではまだ距離があり、タラートまでの道は険しい山々が連なっているため、移動に時間がかかることが予想されていた。
領境の門が破壊されたことを伝えられた軍は急いで軍備を整えていた。
「レイス卿、まさか王軍がこれほど早く動き始めるとはな」
「全くです、クランス王子。しかし、我々もこの3年ただじっとしていた訳ではありません。遺物を使った対魔物用の兵器も完成させました。はたしてこれがどの程度役に立つものか」
「そうだな。あれはレイス領の技術の結晶だ。必ず成果を出せるはずだ」
領館の一室で、領館の会議室で話し合うのは、レイス領の領主と王位継承権を持つ第二王子のクランスであった。
「ところでノアとリリアナには知らせなくても大丈夫でしょうか?」
「知らせを出そうにも地下遺跡には指輪がなければ入れないのでなあ。まあ、二人が出てきたときに良い報告ができるように勝つしかあるまいな」
二人はそういうと笑いあった。
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