第153話 レイス領堺02

 クロード王の様子の変化に気づいてローブの男がクロード王に声をかける。

 

 (まずい、やはりまだ……)


「クロード様、このまま領都を目指しましょう。こちらの領門は私が行かせていただきます」

「ああ」


 ローブの男はそう言うと、自分の部下たちに向かって指示を出す。


「お前ら! 領門内にいる奴らを始末しろ!」


 ローブの男は、そう言ってクロードを先に進ませる。

 部下たちは兵士たちを倒していく。ローブの男とその部下たちは全員黒いモヤを纏い何か特殊な力を使っているようだった。

 一方先に進んだクロード王も待ち構えている兵に大剣を振る度に兵士の首が飛び、血飛沫が上がる。

 しばらく進むと大きな広場に出る。そこには、100人近い兵士が待ち構えており、全員が槍を構えクロード王に向かって突撃してくる。クロード王は、大剣を地面に突き刺すと、両手を広げ何かを唱える。すると、地面から黒い鎖が現れ兵士を縛り上げ拘束していく。黒い鎖は兵士を締め付け骨を砕き、絶命させる。そして、クロード王は、大剣を引き抜くと、兵士達の中心に飛び込み、次々と兵士を切り刻んでいく。


 その様子を遠目に見ていたローブの男は、急いで領門に向かう。


(切り刻んじまったら新しい兵士を作れねえじゃねえか…… 加減できないのかよ、使えないねえ)


 ローブの男は心の中で愚痴を言いながらも領門にいる兵を倒していき、領門を制圧する。ローブの男は、足を止めクロード王の進んだ方向に目をやる。そこにはまだ黒い鎖で縛られたままの兵士と、それを見て赤い目を光らせ笑っているように見えるクロードの姿が見える。


(やっぱ狂ってるのは狂ってるのか…… この調子で殺させる方が早いか)


 ローブの男はそう思いながら、黒い鎖で縛られている兵士に近づくと、兵士を殴りつけ意識を失わせる。


「クロード様。像をお持ちで?」

「……」


 クロード王は、無言で懐から像を取り出した。

 ローブの男は、像を受け取ると蓋を開ける。中には緑の宝石が埋め込まれていた。


「クロード様。こちらをお使いください」

「……」

「あれ? カーミラ様はこれを使うようにおっしゃっていませんでしたか?」

「……あ、ああ。そうであったな」

「クロード様、本当に大丈夫ですか? どこか具合が悪ければすぐにでも撤退しますが」

「問題ない」


 ローブの男は心配そうにしながらクロード王が像を地面に置くのを確認する。


「はい、確かに。ではクロード様、始めてください」


 ローブの男が急かすようにそういうとクロードはゆっくりと両手を広げる。

 すると指輪が緑色に光りはじめ集められた兵士の死体や捕虜の周りにうっすらと緑色の光が射し、生きているものは意識を失っていく。


 ローブの男は、クロード王に向かって頭を下げる。

 クロードは何か呟く。

 しばらくして光は収まり死体や捕虜たちが動きだす。


「さあ、クロード様。カーミラ様の言葉を思い出してください。あなたはカーミラ様に選ばれたのです。このレイス領タラートを蹂躙しましょう。そして、カーミラ様のためにこの地を手に入れましょう」


 ローブの男にそう言われ、少しうつむいたクロードの目が赤く光っていた。

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