第151話 タラート09

「はい。あの部屋に魔力を感じますね。行ってみましょう」

「わかった。慎重に行こう」


 二人はゆっくりと歩いて近づくと部屋の中には、たくさんの書物が並べられていた。

 ノアはそのうちの一冊を手に取る。その本は古びており、とても読めそうな状態ではなかった。しかし、なぜかその本が気になりノアは手に取ってみる。すると、本のページが勝手にめくられていき、あるページで止まる。そのページには、見たことのない言語で文章が書かれていた。


 ノアは不思議に思いながらその文章を眺める。


 我が名は アフーム=ア・イール・ア・ア・イ・ド・ロ・ス・ラ・リ・ア・ス・……

 ノアは慌ててリリアナの方を向くがリリアナは何も感じていないようだ。


(アフム!! アフムなのか?)

(む? おお、誰の声かと思えば…… あの時の小僧か)

(アフム!! ああ、ノアだ。なんで? どうして急に声が聞こえるように?)

(まあ待て。そう矢継ぎ早に話されてもな。おぬしが今持っている本を持っておけ。それが我と交信する媒介になろう。また声をかけるがよい)


「どうしたんですか?」


 ノアは突然声を出したせいか、リリアナが心配そうに声をかけてきた。


「いや、なんでもない。ちょっと考え事をしていただけだ」

「そうですか。ならいいのですが……」


 リリアナはまだ納得していないようだったが、それ以上何も言わなかった。


「ところで、この本は読めるのか?」

「いえ、残念ですが私には読むことができませんでした」

「そうか……」

「ノアさんが読んでいた本は何だったのですか?」

「いや、俺にもわからないんだ。まあこの本は気になるから持っていくとするよ。リリアナ、この先に王家の間があるんだったよね?」

「はい。この遺跡の最深部にあると聞いています」

「よし、それじゃあそこに行こう」


 二人は再び歩き出し、ついに最奥部の扉の前にたどり着いた。


「さっきの揺れといいこの扉といい……この先は危険かもしれない」

 一度戻った方がいいかもしれないな」

「そうですね、あの揺れが何だったのか気になります。一度戻りましょうか」

「次はやはりクランスも来てもらった方がいいかもしれないね。王家じゃないと開かない、なんてこともありそうだし」

「確かにそうかもしれませんね」

「よし、戻ろう」


 二人は来た道を引き返していった。そして、元の場所に戻ってきたが、そこで先ほどよりも激しい振動に襲われていた。


「これは…… 一体……」

「ノアさん! 逃げましょう!」

「ああ、とりあえず外に出て!」

「はいっ!」


 二人は急いで出口に向かう。そして、ようやく外に出ることができた。

 そこには信じられない光景が広がっていた。

 大きな地震により大地が崩れ始めていたのだ。


「なっ!?」

「そんな!?」


 二人は崩れゆく遺跡と研究所を見つめることしかできなかった。


「くそっ! 何があったんだ?」

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