第150話 タラート08

 翌日、ノアとリリアナはタラート遺跡に向かう。タラート遺跡は研究所の地下にあり、現在は閉鎖されている。もともと王族しか入れないよう結界が張られていて研究所の所長ですら遺跡最深部に入ることは許されていなかった。

 しかし、今回元王族のクランスから結界を開くための指輪を借り受けタラート遺跡の調査を行うことになった。クランスも遺跡最深部のキーになるという事は知っていたがタラート遺跡には入ったことがないらしく、王族の秘密が何なのかは知らないという事だった。

 ノアはタラート遺跡に入る前に一度深呼吸をして心を落ち着かせる。リリアナも緊張している様子だった。

 遺跡に入ると、まず最初に地下へと続く階段があり、そこを下っていくと扉がある。


「ここが入り口のようだな……」

「そうですね。中に入ってみましょう」


 二人が扉の中へ入ろうとすると、クランスがやってきて二人に声をかけてきた。


「おい、ちょっと待ってくれ」


 クランスの声に二人は振り返る。


「どうした?」

「すまない。実はさっき思い出したことがあってな……

 昔、俺は一度だけこの遺跡に入ったことがあるんだ。その時、不思議な声を聞いてな……」

「不思議って?」

「あぁ、なんか聞いたこともない言葉なんだが、俺のことを呼んでいるような気がしてな……」

「ふーん。それで?」

「いや、それだけだ。気にしないでくれ。それより早く行かないとな」


 クランスはそう言い残すと戻っていった。

 二人はクランスが去っていくのを見届けると扉の中に入る。

 すると、目の前には広大な空間が広がっていた。


「すごいな。こんな場所があったなんて……」

「はい。私もこの光景は初めて見ました。それにしても広いですね」


 しばらく歩いていると、奥の方から光が差し込んでいるのが見える。どうやら光はこの先にあるらしい。

 ノアたちは光の射し込む方に向かって歩き出した。

 光が差している


「眩しい……

 もうすぐか?」

「はい。おそらくそろそろです。気を付けてください」

「ああ、ありがとう」


 二人は警戒しながら歩く。そして、ついにその場所に到着した。

 そこには巨大な魔法陣が描かれていた。


「これが古代文字?……でも、この大きさは一体……」

「はい。ここまで大きいものを見たことはありません」


 ノアとリリアナはその巨大さに驚いていた。


「とりあえず、触れてみるよ。大丈夫かな?」


 ノアはそう言って魔法陣に手を伸ばした。


「あっ!」

「えっ!?」


 ノアが手を伸ばして触れると、突如、地面が大きく揺れ始めた。


「な、何だ!?」

「わ、わかりません。とにかくここから離れましょう」


 二人はその場から急いで離れた。しかし、その直後地面に大きな亀裂が入り崩れ始めた。


「くっ! このままじゃ生き埋めになるぞ!」

「は、はい! ノアさん! こっちに来てください」


 リリアナはそういうとノアの手を取り走り出す。そして、近くにあった岩陰に隠れる。


「はぁはぁ…… 何とか助かったみたいだな」

「はい…… はぁ…… ここは危ないかもしれません。別の場所に移動しましょう」


 ノアとリリアナは再び移動を開始する。

 少し進むと、前方に小さな部屋のようなものを発見した。


「リリアナ、あれは何かわかるか?」


 ノアは部屋の方を指差してリリアナに問いかけた。リリアナもノアと同じ方向を見て確認する。

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