第120話 王都レムサ03
「エレナ王女の居場所を教えてくれ。頼む! 俺はどうしてもエレナ姫を連れて帝国に戻らなければならないんだ。そのためなら、どんな情報でも集めるつもりだ。たとえそれが国を売る行為であったとしてもだ。頼む、教えてくれ! エレナ姫の居場所だけでも構わない! 頼む!」
「エレナ王女の居場所を今更? そんなことは、我々王軍に任せればいいではありませんか。ふふ、そんなに必死になって頼まれたら断れないじゃないですか。仕方ありませんねえ。特別にお教えしましょう。 実は、エレナ様の身柄は王国ではなく、帝国にあるのです」
「なんだとっ!?」
「どうしました?」
「い、いや、ちょっと待ってくれ… 今なんて言った?」
「えぇ、ですから、エレナ様は今帝国にいるのです」
「な、なんで?」
「それは、私も存じ上げません。しかし、事実としてそうなっているのです」
「そんなバカな……」
――どうして、そんなことに――
――俺はそんな話聞いていないぞ――
「どういうことだ?」
「ふむ、その様子だと、本当に何も知らされていないようですね。しかし、私にも詳しい事情は分かりかねます。私にもわからないことをあなたに話すことはできないのですよ。ただ一つ言えるのは、エレナ様は無事だということだけです」
「本当か?」
「はい、保証いたします」
「それを信じてみることにするよ」
今までの3年間
一体何だったというのだ!
わかってはいたが
俺は帝国から捨てられたのか。
そんな思いが体中に痛みとして流れる。
「それで? 俺に何をさせようっていうんだ?」
「まずは、あなたには帝国に潜入してもらいたいのです」
「潜入だと?!」
まずはエレナ様に会っていただく必要があります。と、 シグーラは言い、続けて
「それから、例の青年の事なんですが」
シグーラはあいつのことを話し始めた。
「彼のことはしばらく我々に任せていただきます。ルブストの街ではまんまとしてやられましたからね。あ、まあこれはあなたには関係のない話です」
「あいつか?」
「ええ、できれば、彼との戦闘は避けて欲しいところですね。まあ、あなたの昔の実力ならば問題ないとは思いますが」
「それは… 頭脳戦ということか?」
「まあ、彼との接触はなるべく避けるということです」
「了解した」
「それと、もう一つお伝えしておくことがありまして……」
「なんだ?」
「私も一度帝国に戻るつもりです。そして、あることを実行しようと考えています」
「なんなんだ?」
「今は言えません。いずれわかる時が来るでしょう」
「そうか…… それで? 俺に何を求めるんだ? さっきの話を聞く限り、俺にできることはほとんどないと思うんだが。むしろ足手まといになる可能性の方が高い。それでも、俺にできることがあるというのか?」
「はい。今は、まだその時ではないのですけれど。時が来れば必ずわかります。それまでは、あなたは王軍への、まあ私への情報提供者として動くことに専念しておいてください」
「なるほど、わかった。あくまでも王軍への情報提供ってことだな?」
「はい。では、私はこれで失礼させていただきます」
そういうと、シグーラは忽然と姿を消した。
ギルフォードはその場で頭を抱えた。
そして、何度もため息をついた。
――これからどうするべきか
――俺はエレナ姫を見つけられるのか
――そもそも、いまさら連れ去る価値があるのだろうか
3年前、帝国は王国と戦争をしたがっていた。現状、王国はすでに内乱状態にあり今帝国が出ていくよりも王国内で争わせて終結しそうなときにおいしいところを持っていくのが定石だろう……
帝国の軍人「シグーラ」が王軍に所属(潜入)している。
帝国人である俺が王軍への情報提供者として帝国に潜入する。
だがなぜ今動く?
何か別の思惑があるのか……
いまさら考えても仕方ない。俺は俺にできることをするしかない。
そう思いなおすと、帝国に潜入するための準備に取りかかる。
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