第117話 聖王国:ロニ
エルキーポ聖王国、首都カハの東に位置するウィネスロニの街にある離宮、通称『魔導宮』と呼ばれる場所。そこには6人の男女が集まっていた。
部屋の中央には巨大なクリスタルが設置されており、そこに映し出されているのは一人の少女の映像だった。
その映像を見て一人の女性が声を上げた。
A:「聖王陛下、この子はどうでしょうか?」
すると、別の男が続けて口を開く。
B:「おいおい、こんなガキんちょに何ができる言うんや」
すると、隣にいた女が呆れたような表情で男に視線を向けた。
C:「あんたねぇ〜 この子が何者か忘れたわけじゃないでしょうね〜」
B:「ぐっ…… わ、わかっとるがなぁ〜 せやけど、まだ15,6歳の子供やんけ。ほんまにできるとは思えへんのやって!」
すると、今度は他の二人も会話に加わる。
A:「でも、実際に彼女は私達の期待に応えてみせたんですよ。しかもたった一人で……」
C:「そうそう、しかも彼女は自分の力を全く見せなかった。つまり、あの時はまだ力を隠していたってことよね。それなのに私たちの計画は見事に失敗しちゃったし……」
D:「そういえば、あの時は本当にびっくりしたわ。まさか彼があそこまでの力を持っているなんて夢にも思ってなかったからね。彼女の力は圧倒的だった。あれだけ圧倒的な力を見せつけられたら、誰だって警戒するわよ。特にうちの国の貴族連中なんかはさ。だから、今回の計画も失敗して当然だったんじゃない?」
すると、今まで黙っていた男が話し始める。
聖:「ふん、そんなことは関係ない。失敗したのならまたやり直せばよいだけのことだ。 幸い、次の候補となる人材も見つけることができたのだからな。なぁ? アベルよ」
それまで一言も喋らずに話を聞いていたアベルと呼ばれた男が答える。
ア:「はい、聖王陛下。次の候補者も順調に育ってきております。ですが、まだ少し時間がかかるかと……」
聖:「その必要はない。もうこれまでに準備はしてきている。いつでも始められるように進めておくのだ。わかったか?」
ア:「かしこまりました」
そう言って、男は立ち上がりその場を後にしようとする。すると、その様子を見ていた女性が慌てて引き止める。
彼女はこの国の宰相を務めている人物である。そして、この場にいる全員を取りまとめる立場にある。彼女は、今まさに退室しようとしていた男を呼び止めた。
そして、真剣な表情で問いかける。
A:「ところで聖王陛下、あの少女、今はもう少女ではないでしょうけれど… 彼女はいったいどこのどなたなのでしょう? もしよろしければ教えていただけませんでしょうか? できれば直接お会いしてみたいのですが……」
しかし、返ってきた言葉は意外なものだった。
聖:「ダメだ。あやつには会わせぬ。貴様にもだ。余が許可するまで決して会うでないぞ」
A:「な、なぜですか!? 私はただ……」
聖:「これは命令だ。貴様には聞いておかねばならぬことがある。それに、その件に関してはすでに調査済みだ。 だから、今は余の言葉を信じて待てばよい。いずれわかる日が来るだろう。それまでは誰にも知られるわけにはいかぬのだ。わかったか?」
A:「……わかりました。」
宰相の女性は悔しそうな顔で返事をした。しかし、それは彼女だけではなく他の3人も同じような気持ちであった。
B:「くっそ~! なんであいつはあんなに強いんや! あないな奴がおるなんて聞いてへんわ! 一体どないなっとんのや!!」
C:「ほんと、あの子の魔力量は尋常じゃなかったわ。おそらく普通の人間ではあり得ないほどの量よ」
D:「それにしても凄かったわよね。まさか上級魔法を使える子が現れるなんてね。それも無詠唱で…… あの子がいればきっと……」
聖:「そうだな。我々の悲願が叶う日も近いかもしれんな。ふふふふふ…… はーっはっはっは!!! 楽しみにしておれ! 必ずやお前に最高の舞台を用意してやるぞ! ふはははは……」
魔導の間に笑い声が響き渡る。
彼らは何を企んでいるのか……
その目的はなんなのか……
そして、彼らが目指す先にあるものとは……
それはまだ誰も知らない。
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