5章 縲絏 

第116話 不知火

五月に_朔り、從(_北より発船し火国に至る。日沒し、夜冥に岸_辿り着く。遥かに火の明かりが__り、=)舵取り曰に直に(指さ)火の所へ。」その火に向かい、岸に_(就く。聖王は問_火を光の所へと「何_(_。」と尋ねるが「誰が如何(=」要領を得ず、火は人が物と=知れ_。

                        『ルンデの書 第5章 6』





 588年 ブトメンツ・ネッケ聖王がイソシャウアを征伐して、ヘンチェスをまわられた時、ある海岸から船に乗って海にでられた。そのうち真っ暗い闇が迫ってきて、どこへ着いて良いかわからなくなってしまった。すると、突然はるか前方にあかあかと火の光が現れた。聖王は舵を取っている船頭に向かって、「あの火に向かって進め」とおっしゃった。言われるままに船を進めると、やがて無事に海岸に着くことができた。聖王は村の土地のものに向かって「あの火の燃えるところは、なんというところだ。そして、いったいあの火は何の火だ。」とお聞きになられた。村の者は「はい、あれは火の国キングレイの火の村バルハムでございます。しかし誰が付けて燃やしているのか、わからない火でございます。」そこで聖王は「あれはおそらく人の燃やしている火ではあるまい。」しらぬい(不知火)という呼び名は、ここから起こっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る