第113話 ルブスト 25

 翌日、ライマンに言われた場所、森の入口の目立たない場所に向かっている。近づくにつれ待っている人の姿が見えてくる。一人は30代くらいの男性ともう一人は若い女性の二人組だ。


 そして……


「リリアナ!!」


 なぜ彼女がいる?

 無事だった!

 そう思うと涙があふれる


 突然俺が大声を出したので二人は驚いていたが、泣いている俺を見て駆け寄ってきた。


 俺は泣きながらリリアナを抱きしめる。リリアナは驚いていたようだが構わない。


 よかった。本当に良かった。


 何があったのか?

 リリアナは無事だけどエレナは?


 色々聞きたい事があるのに言葉にならない。


 しばらくしてようやく落ち着いたノアは二人に話しかける。


 リリアナの話から、自分には記憶がないという。彼女はストビーの町付近で倒れているところを横の男性、クランスに救われ、修行をしながら記憶を取り戻すための旅に出たそうだ。今回のナンギ鳥の一件ではクランスと共に冒険者ギルドの一員として協力してくれたらしい。


 話をしていると、森を少し入った場所に小屋があるらしくクランスの提案でそこでゆっくり話をしようということになった。


 リリアナも自身のことを知っている人物に出会えるとは思ってなかったらしく早く話したそうにしていた。



「まずは挨拶をさせてくれ。俺はクランス。リリアナと一緒に旅をしている。そちらはライマンの紹介のタイークイースでよかったか?」


「ああ、さっきはすまない、取り乱してしまった。リリアナもごめん。急に抱き着いたりして」


「ええ、ああ、うん……」


「俺はタイークイース、本名はノア・ギマーラだ。訳あって旅を続けている。まあその理由の一つがリリアナなんだけど…… 本当に無事でよかった」


「ああ。その話を先に済ませたほうがよさそうだな。私の用件はその後で伝えさせてもらおう。その方が二人とも落ち着くだろう。私は少し、外に出て何か狩ってこよう。飯も食わなければな」


 クランスはそういって小屋の外に出て行ってくれた。


「…さっきはごめん。抱き着いちゃって。そんなことしたこともなかったのに……」


「あ、うん。あの、タイークイースさん… いえ、ノアさん。本当に私はあなたの知っているリリアナなんでしょうか?」


「ああ。間違いないよ。記憶喪失になったみたいだから無理もないけどね」


「私にはわからないんです。私がどんな人間だったのか、どうしてここにいるのか、何もかも覚えていないんです。ノアさんのことさえ…… でも、なぜかあなたを見ると懐かしく感じるのです。初めて会うはずなのに……」


「俺も同じだよ。君を見た時、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。 ……よし、それじゃあまず、君の話からしようか。君の家族の話を。そのあと俺たちが出会ってからの話を聞いてもらえるかな? 少し長くなるけど、俺が今何をしているのかも含め、全部話すから。途中聞きたいことがあったら何でも聞いてくれ。答えられる範囲なら答えるし、話せることはちゃんと説明するよ」


 それから俺はリリアナに今までのことをすべて話した。リリアナは黙って聞いていた。時々質問したり驚いたりしていたが最後まできちんと聞いてくれた。


 一通り話し終えた後、俺は今後について考えていたことを相談することにした。


 エレナの事だ。リリアナと共に連れ去られ現在も行方が全く分かっていない。俺自身エレナのことが気がかりでならない。それに、もしこの先彼女に会う機会があれば謝らないとと思っている。


 リリアナが無事でいてくれたことがどれほど自分を勇気づけてくれたか、ありがたかったか。

 そしてこの後、自分はエレナ捜索に全力を注ぐつもりなのだとリリアナに伝えた。

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