第112話 ルブスト 24

 ―――宿屋のとある一室


「ほんとにすげえな、まさかここまでうまくいくとは思わなかったぜ」


「……本当にありがとうございました。ほんとうに、私にはいまだにどうしてこうなったのかよくわかりませんが」


「いやまったくだ。最初にこの計画を聞いた時にはうまくいくわけはないと思ったが…… 乗ってみるもんだな。しっかしよくこんな計画を思いついたもんだな。ナンギ鳥なんてどっから出てきたんだ、ノア?」


 ライマンとメイテさんの二人はわいわい言いながら話しかけてくる。


「まあ情報ギルドと冒険者ギルドの協力が得られるとわかっていたからね。しかもこの街の両ギルドの長が協力してくれるんだもの。やりやすかったよ」


「ほんと、お前は敵に回しちゃいけねえな。冒険者ギルマスも相当楽しんでやがったなあ。あいつがこんなに乗ってくるとは思わなかったぜ。どんな条件を冒険者ギルドに提示したんだ?」


「それは言っちゃだめだろ? 秘密だよ」


 そう答えておいた。

 冒険者ギルドのマスターとの交渉はなかなか楽しかった。冒険者ギルドもベティル商会と教会にはさんざんひどい目にあわされていたらしく、新人冒険者や引退寸前の冒険者をひどい条件で使いつぶしたりしていたらしい。

 俺が話を持ち込んだ時には相当悪い顔をして乗ってきた。よっぽど楽しかったんだろう。

 そんなことを考えていると、メイテさんが話しかけてくる。


「私…… 教会には本当にひどい目にあわされて…… こんな風に教会の悪事を暴いてくれて…… 本当にありがとうございます」


「メイテさん、俺はメイテさんに謝らなければいけないんだ。初めて会った時のことを覚えているかい? おれはメイテさんに連れられてこの街に入ったよね? その時の街の人の動きを見て何かあるのはわかっていたんだ。その時すぐに動けば君があんなひどい目にあう前に助けることもできたんだ」


「いいえ、それは違います! あの時の私はもう何もかもをあきらめていたんです。それを救ってくれたんです。ノアさんは何も間違ってなんていないんです!」


「ああ、ありがとう。さて、とりあえずルブストの街の一件はこれで何とかなったね。メイテさん、ここからの動きをどうするか決めたのかい?」


「はい、決めました。私は、ノアさんについていこうと思います! っていうと困るだろうと思って…… さきほどライマンさんにお願いして情報ギルドの連絡員になろうと思います。少しでもノアさんに恩返しできればと思っています」


「そ、そうなんだ。うん、そっか。メイテさんが決めたことなら応援するよ。ライマン、わかってるだろうと思うけど……」


「おう! あったりめえよ! ただな、危険な目に合わせないって約束はできないぞ。本人が決めたことだろ、ノア」


「ああ、そうだな。メイテさん。そう決めたんだね、応援するよ、そして、ありがとう」


「お礼はちゃんとお役に立てたときにお願いします!」


 そう言って笑い合った。

 ひとしきり話が落ち着いたころ、


 「ノア。お前はこれからどうするんだ?」


 ライマンが尋ねてくる。


「うん。そうだなあ。もう少し情報が欲しいところだし、新王都に向かうかな」


「そうか、だがその前にな、会ってほしい人がいるんだ。今後のお前のために、いやその人のためにお前の力が必要なんだ。会ってみちゃくれねえか?」


「うーん、どうだろうなあ。たしかに俺には力が足りないね。今回、情報ギルドや冒険者ギルドの力を借りたからこそうまくいったしね。いいよ、その人に会ってみよう」


 そういうとライマンはさっそく段取りをつけてくると部屋を出ていった。

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