第110話 ルブスト 22
―――とある森の中
「ねえ、クランス。私たちの仕事ってこれでよかったの?」
「ああ、もちろんさ。街の中で騒ぎが大きくなったろう? そして最終的にはベティル商会と教会の悪事を暴くという目的が達成できたではないか」
「ええ、まあそうなんだけど、釈然としないわ。全体がどう動いていたのかが見えないのは」
「ん? そうなのか? そのあたりが気になるという事は、もしかするとリリアナはどこかで軍の動きなどを学んだのかもしれんな」
「うーん…… わかんないけどね。いい加減に教えてくれる? もやもやして気分悪いわ」
「うむ。まあ私も絵を描いた人間を知っているわけではないのでな。わかる範囲で、ということになるが、話しておこう」
そう言ってクランスが語り始める。
それを聞いてリリアナは驚きを隠せなかった。
まず今回のはじまりは「ナンギ鳥」という魔物の出現、これは架空の魔物で情報ギルドが情報を操作するところから始まり、実際にいろいろな物を拝借して集めていたそうだ。「ナンギ鳥」の姿を見たというのも数回いろいろな魔物の素材と拝借したものを集めて魔法で飛ばしたということだった。
いくらなんでもそんなものはすぐにバレるのではないかと情報ギルドも考えたらしいがこの計画を立てた人物は巧妙に人心を操り虚実を織り交ぜながら「ナンギ鳥」が本当にいるようにこの街の中に浸透させていった。
そういえば宿屋の爆破事件もその一環だったらしく、その宿屋の主人は爆破の後、宿屋再建のための金銭を手に入れ宿屋を新しくできている。
そしてナンギ鳥の存在が浸透しきったところを見計らって次の段階へ計画は移行する。
ベティル商会の会長連れ去り事件、これは実際には冒険者ギルドが関わったらしいが詳細はクランスにはわからないと言っていた。クランスの考えでは、冒険者ギルドが誘拐(?)して監禁していたのではないかと言っていたがもしそれが本当ならとんでもないことではある。クランスの話の途中、ついそう言ってしまったらクランスが「だからナンギ鳥の仕業なんだろう」と言っていた。まあそうなんだろうけど呆れてしまった。
そして討伐隊が編成され、森に向け出発した日。商会と教会の悪事を暴き出すため、森への討伐隊の中に情報ギルドのメンバーが入り冒険者ギルドと協力してナンギ鳥の討伐に向かう。冒険者の中には「ナンギ鳥」になったものもいるらしい。この辺りも聞いただけなのでクランスにも詳細は不明。
その間、私たちはというと指示に従い街で冒険者たちの教会への誘導を行った。これも情報ギルドが前もってベティル商会と教会の癒着の噂を広めておいたこともあり、すんなりと冒険者たちを誘導し、その後住民たちを誘導することができた。さらにいうと教会内のこれまでの隠し資料の場所まで教えてもらっていたのだ、これで失敗するようなら冒険者などやめた方がいいとクランスは言っていた。
なんでそこまでのお膳立てをおこなってまで住民を誘導したのかはよくわからないけど、それもクランスによると「そういう依頼だった」ということらしい。
私たちのような者が各所にいてそれぞれが動いてこの一連の流れを作っていった。
情報ギルド、冒険者ギルド、兵士たちを動かし、住民たちが自ら動いてベティル商会と教会の悪事を暴いたと思わせる。
それを計画し実行したのは何者なのか、そのことが気になってクランスに聞いてみる。 クランスも詳しくは知らないらしいが、情報ギルドで「タイークイース」と呼ばれている人物だと言っていた。
―――私は…
その「タイークイース」を知っている…
リリアナはなぜかそう思った。
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