第109話 ルブスト 21

 兵士たちがめちゃくちゃになった商会の中を検分すると商会のこれまでの悪事の証拠が大量に出てくる。そして、この騒ぎを引き起こしたと思われる書類や盗品を発見する。それらの証拠を持って、ベティル商会の会長も逮捕され、本部へ連行された。


 ベティル商会で兵士たちが検分を終えたとほぼ同時に、大量の街の住民が押し寄せてくる。どこからどう広がったのかベティル商会と教会がつながり、街の復興の利権を独占していた、街を牛耳っていたのは教会とベティル商会だと広まったらしい。そして、ベティル商会が復興当初に貸し付けて返済不履行になった品や巻き上げた金品、盗品を不当に扱っていたという不正確な情報も瞬く間に広がり、ベティル商会は、街の人間たちから袋叩きに合う。中には、ベティル商会の幹部が教会の関係者だったという証言もあり、ベティル商会は完全に崩壊した。

 一方で教会に向かった住民たちも同じように教会関係者を拘束し問い詰め悪事を働いていたことを突き止め、教会にある証拠を押さえたようだった。こちらを主導したのは冒険者ギルドだということだった。

 手際のいいことだと感じるものもいたようだが大きな問題にはならなかった。



 森に向かった討伐隊も冒険者たちの活躍によって商会と教会の悪事を暴く結果となった。彼らも街に戻るとナンギ鳥が飛び回りベティル商会に突っ込んでいったなどとはじめは信じられなかったようだが、森での商会、教会との戦いが実際に行われている以上、街でのこの状況も何の不思議も感じなかった。






 ―――数日後、ある兵士の日記


 ……拘束された者たちは一様に自分たちは指示されただけだと訴えていたが、悪事に手を染めた者たちの末路に明るい未来はない。

 ただ逮捕者全員、一人としてナンギ鳥を使った悪事については知らない、自分たちのやったことではないと語っていた。


 まあこの件もいずれ明らかになる事だろう。誰かが言ってたけど悪は栄えないのだ。


 教会については以前から問題視されていたこともあり極刑を望む声も多かったが、あくまでもルブストの教会が単独で行ったことであり、国全体を揺るがすようなことのないよう王国から厳命されているらしく、こちらもあまり大きな問題にはなりそうもない。


 ベティル商会は壊滅し、その後の凋落はすさまじい。そしてそれは他の大きな商会にも波及している。商会は街の権力を掌握していたが、逆にその権力によって自分たちの首を絞めることになってしまったのだ。


 私たち兵士と冒険者たちの活躍により、街は平和を取り戻した。そして何よりも今回は街の住民たちの協力も大きかった。街を共に守る連帯感というのかそういうものが存在した。素晴らしいことだと思う。


 しかし、まだ問題は残っている。


 ナンギ鳥の行方については全く分かっていない。どこかの街に現れ、被害が出るかもしれない可能性も高いため、引き続き捜索を行う予定だそうだ。

 隊長たちは報告書をどう書くのかすごく悩んでたな。

 

 まあなにより、この一件でベティル商会の悪事が白日の下に晒されることになったんだ。


 ざまあみろだ。


 今まで不正を行っていた商会が次々と潰れていくことになるだろう。この領の経済状況は大きく改善されることになる。本当に良かった。

 

 不正が行われない正しい行いにこそ我々兵士は命を懸けるべきだと思う。

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