第108話 ルブスト 20

 数時間前

 街の衛兵たちはベティル商会の様子を探っていた。この一連の騒ぎはベティル商会が引き起こしているとの情報が寄せられたためである。その情報を基に兵士たちはベティル商会を探っている。そんな中、一人の兵士がナンギ鳥がベティル商会に向け突っ込んで行ったことを確認する。


 兵士たちはナンギ鳥が入り込みめちゃくちゃになった建物の中に入ろうとめちゃくちゃになった店の入口に向かう。

 すると突然声が聞こえてくる。


「会長!! 会長!! どこに行かれてたんですか! しっかりしてください! 会長!」


「……んんん… なんだ? わしは…」


「あぁ! よかった! ご無事だったんですね! 本当に良かった!」


「ん? ここはどこだ?」


「それはこちらのセリフですよ! まったく! 心配したんですよ!」


「んー 思い出せん……

 そう……ばお前誰…!?」


「えぇ! 私を忘れて……のですか! あなたの……じゃないですか!」


「部下だと! うぅん……」


「会長! ……夫です! 私がつ……ますから!」


 物陰に隠れながら会話を聞いていた兵士たちはこのやり取りに混乱する。このやりとりが演技なのか本気なのかわからなかったからである。連れ去られたはずのベティル会長が店内で部下と話しているが部下の口ぶりでは突然現れた様子。会長本人も何が起こっているのか混乱しているように見える。さらに風の後、ナンギ鳥の姿はこの店内には見当たらない。

 兵士たちは、さらに会話を聞き取ろうと、息を殺し耳を澄ませる。


 するとまた、別の人物が現れる。 今度は女性の声が聞こえる。

 その女性は、ベティル商会の幹部の一人だった。

 幹部の女性が、現れるとベティル商会の幹部が言う。


「おい、どうする? 本部に連絡を入れて対処しないと俺たちだけじゃ決められないぞ!」


「わかってるわよ! うるさいわね! もう本部に人を送ったから。とりあえずこの鳥騒ぎが何とか収まらないとどうにもならないわよ!」


「くっそ!! ほんとなんでこんな目に合わなきゃいけねえんだ!」


「あ、それから、あの鳥がここに飛んできたって街の連中も騒いでたからそろそろ人が押し寄せてくるわよ… あの鳥、今まで盗んだものを撒きながらここまでやってきやがったのよ!」


「まじかよ! さすがに俺達だけで対応できないぞ! とにかく、俺は本部に戻って対策を考えておく! お前は、街の奴らをなんとかしろ!」


「わかったわよ。」



 幹部の男は、すぐさま本部からの返答を見て、幹部の男は青ざめた顔で店内に戻ってくる。


「おい、すぐにここを引き払うぞ!」


「どういうこと?!」


「指令が出た。動くんだよ! とっとと荷物をまとめろ!」


「え、それじゃあ、私たちはこれからどうなるの?」


「そんなことは知らん! とにかく逃げる準備をするんだ!」


「いやよ! 私はまだ何もしてないわ! こんなところで捕まるわけにはいかないのよ!」


「馬鹿野郎!! そんなこと言ってる暇はないんだ。早く今までの稼ぎを積み込むんだよ!!」


「嫌だって言ってるでしょう!!!」


 幹部の女性は、そう言い放つと、男に切りかかる。


「ぐあああああ!」


 …………バタン!


 女性の取り出した短剣により、男は倒れこむ。


 兵士たちはその様子からすぐに飛び出し、女を取り押さえる。男には応急処置を行っていく。


 女を取り押さえた兵士たちは、商会の中を検める。

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