第107話 ルブスト 19

 一方、街はナンギ鳥の襲来にパニックに陥っていた。


 ナンギ鳥はこれまで持ち去った物品を町中に撒き、落としていた。大工道具や皿、徳利やお金まで。そのため鳥を恐れる者だけではなく、ナンギ鳥が落としたものを奪い合う者までも出ている。


 ナンギ鳥はそんな街なかの事など気にもしない様子で街の上空を飛び回りながら品物を撒き続けている。


 街の警備隊は、ナンギ鳥をなんとかしようと試みるがナンギ鳥のあまりの速さに手が出せず、街のあちこちで、被害がでていた。

 時間の経過とともに事態は最悪なことになっていく。なんと街の上空を飛んでいたナンギ鳥が急旋回し、ベティル商会に向けて飛んでいったのだ。そしてナンギ鳥はそのままベティル商会に急降下していき、屋根を突き破り商会の中に入っていった。

 ベティル商会の店員は突然現れた巨大な鳥に驚いている。ナンギ鳥は突如、風魔法を放ち、辺りが風に巻き込まれて行く。店の中は手が付けられないほどぐちゃぐちゃだ。


 ゆっくりと風がおさまるとそこには連れ去られたはずのベティル商会会長の姿が現れたのだ。



 幹部は、何が起こったのか理解できなかったが、目の前にいるのは確かに、会長だ。幹部は、すぐさま会長を保護する。


 ベティル商会の会長は、 自分の身に何があったかを全く覚えていなかった。

 幹部は、その話を聞いて愕然とする。


「会長!! 会長!! どこに行かれてたんですか! しっかりしてください! 会長!」


「……んんん… なんだ? わしは…」


「あぁ! よかった! ご無事だったんですね! 本当に良かった!」


「ん? ここはどこだ?」


「それはこちらのセリフですよ! まったく! 心配したんですよ!」


「んー 思い出せん……

 そういえばお前誰だ!?」


「えぇ! 私を忘れてしまったのですか! あなたの部下じゃないですか!」


「部下だと! うぅん……」


「会長! 大丈夫です! 私がついてますから!」


 その声を聞きつけて店の奥から幹部の女性が現れる。

 ベティル商会の幹部が言う。


「おい、どうする? 本部に連絡を入れて対処しないと俺たちだけじゃ決められないぞ!」


「わかってるわよ! うるさいわね! もう本部に連絡を送ったから。とりあえずこの鳥騒ぎが何とか収まらないとどうにもならないわよ!」


「くっそ!! ほんとなんでこんな目に合わなきゃいけねえんだ!」


「あ、それから、あの鳥がここに飛んできたって街の連中も騒いでたからそろそろ人が押し寄せてくるわよ… あの鳥、今まで盗んだものを撒きながらここまでやってきやがったのよ!」


「まじかよ! さすがに俺達だけで対応できないぞ! とにかく、俺は本部に戻って対策を考えておく! お前は、街の奴らをなんとかしろ!」


「わかったわよ。」



 幹部の男は、すぐさま本部に連絡の返信を受け取りに行く。そして、王都にあるベティル商会の本部では、緊急会議が開かれることになった。




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