第105話 ルブスト 17

 翌日、冒険者や傭兵たちが広場に集まり、討伐の準備が進んでいる。これまでこの街で起こった不可思議な事件、「ナンギ」という鳥の魔物による盗難、騒音、ベティル商会会長連れ去り、宿屋爆破など住民たちも我慢の限界である。


一人の司祭が人々の前に立つ。


「皆様、本日はよくお集りいただきました。昨今巷を騒がせておる鳥、「ナンギ」なる魔物を討伐するため、教会並びにベティル商会では皆様に依頼をお出しするという形で報奨金を支払うことと致しました! もちろん我々も同行し呪文などを封じるお手伝いをさせていただきます! どうぞ街の安寧のため、皆様のお力をお貸しいただきたい!」


続いてベティル商会の幹部も挨拶を行い、参加者は森に向けて出発する。



 街では討伐隊が去った数時間後、領の兵や冒険者達が警護にあたっていた。

 そこに「ナンギ鳥」と思われる大きな鳥が街の上空に現れる。それを見た人々は驚き、騒ぎ出す。街に残ったベティル商会の幹部たちも慌てて対応にあたる。

 上空に鳥が現れた混乱の中、今度は突如街に現れた巨大な黒い荷馬車に人々が襲われる。それは、ベティル商会が用意させた囮の荷馬車であり、森でナンギ鳥に襲わせて、討伐隊は森の中に隠れて討伐に使用する予定だった物だ。討伐隊に加わったはずの荷馬車が街に現れ、それがあまりに大きすぎた為、事情を聞かされていない街の住民のパニックはさらに広がっていく。

 ベティル商会は、なんとか事態を収めようとするが、 騒ぎは大きくなるばかりであった。


――――――


 一方、森の中では討伐隊の面々が集まり、作戦会議を行っていた。今回の討伐対象は、空を高速で飛び回り、強力な魔法を使う厄介な相手だ。

 そこで、まずは、相手の機動力を削ぐために、動きを封じることを試みることになった。討伐隊は、風属性魔法の使い手を集め、足止めを行うことにした。そして、動けなくなったところを、攻撃して倒す。単純だが有効な方法だった。

 討伐隊は、早速準備に取り掛かる。ベティル商会から提供された魔道具を使用し、風の結界を作る。これは、中に入ったものを包み込み、その中では自由に飛び回ることができなくなるというものだった。

 ベティル商会は、今回の件について、協力を惜しまなかった。会長の連れ去りなどベティル商会としては、今回の騒動をさっさと片付けてしまいたかったからだ。


 しかし、その目論見は、あっさりと崩れることになる。


 討伐隊の準備が完了し、いざ出発しようとしたその時、冒険者ギルドの幹部達がやってきた。


 そして冒険者ギルド幹部の面々が、討伐隊の前に立ち、こう宣言した。


「ギルドは、今回ルブストの街に巣食う悪の組織であるベティル商会を打倒するために立ち上がった。そして、我々はここに正義を宣言する。討伐隊をベティル商会討伐のために再編成するものとする」


 ギルドの面々が討伐隊の側につき、ベティル商会に宣戦布告をしたのだ。

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