第104話 ルブスト 16
「話しておかなければならない?」
それはどういうことかとクランスに尋ねる。
「今回の爆破事件であの鳥に対する感情はどう動いた?」
「間違いなく討伐に傾いたわね。今までのただ物を盗って逃げるだけの鳥ってわけじゃなくなったもの」
「うむ、そうだな。明日の討伐には多くの冒険者、傭兵が参加するだろうな」
「うん、間違いない。ってことは…… その間街の防衛が手薄になる?」
「おそらく狙いはそこだろうな、と思わないか?」
確かに、鳥が人を攫っているとすれば戦力は必要だ。
しかし、それは同時に街の防衛力の低下を意味する。
つまり、この街が襲われれば多くの被害が出ることは必至だ。
これは一刻を争う問題だ。
私は嫌な予感を覚えつつ考え込んでいるとクランスは真剣な表情で言った。
「すまん、ここからは大事な話になる。この話は他言無用だ。とても重要な話になる」
私は、なぜそんなことを言うのか疑問に思ったものの、クランスの顔を見て、ただならぬ雰囲気を感じ、素直に従うことにした。
「鳥の話は一旦置いておく。この国の元王子の話だ。3年前の魔物大襲撃で王位を奪われた王子は死亡したことになっている。だが実は生きていて今も協力してくれる仲間を探す旅をしている。そしてこの街の協力者に会うため……」
「待って!! 待って待って!! あのねクランス。落ち着いて! 突然なんでそんな話に?!」
とはいったもののクランスは話し続ける。私は話を聞き終わると、呆然とした。
「あくまでもそんな人がいるってことで押し通すのね、クランス」
あきらめてそう言うしかなかった。
そんな私を見てクランスは言う。
この国は今危機的状況に陥っており、他の領に助けを求めるべく旅に出た。そしていろいろあり、あの場所でリリアナとも出会った。その後、リリアナのレベルを上げつつ、各領の情報組織と協力しながら3年間過ごしてきた。王国の情勢不安が進む中、この街に立ち寄りしばらく滞在することになった。そして宿屋の火事が発生した。
リリアナは、話の中で疑問に思ったことを口にする。
クランスは情報組織とつながっている。もしかして、今回の件、わかって動いているのではないか?
「だから、他言無用で頼むと言ったのだ。今から起こることは鳥の化物の仕業だ、いいなリリアナ」
「って? ええ? 納得はいかないけれど承知したわ。この話を聞いた私も協力したほうがいいんじゃない?」
「今まで、私の仕事にはあえて入れていなかったんだがな。お前の力は十分役に立つだろう。今回は私の計画通りに動いてもらうが大丈夫か?」
「わかったわ」
「うむ。ではまず組織の説明からだな。情報組織、これは王国内に張り巡らせてある。表向きにはギルドや商人に姿をやつしている。現在の所、王族以下貴族の信用できる一部にしか知られていない。今回の件は、この街の情報組織がメインで動いているがこの騒動を利用して王国への反旗の一歩目にしようと考えている。ここまでいいか?」
「協力はすると言ったけど、いきなり大きな話ね。まあ、現王国への恨みなら誰にも負けないつもりよ。問題ないわ」
「ああ、そうだな。では今回の任務での我々の役割を話しておこう。さっきも言った通り、この鳥は人を操ることができる、ことになっている…」
こうしてクランス(旧王族)とリリアナは行動を開始する。
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