第102話 ルブスト 14

 ギルドに寄せられるこの鳥型魔獣による被害が日に日に増えている。今のところ死人は出ていないものの、怪我人が続出しており、このままでは死者が出る可能性もある。


 また、目撃情報も増えてきており、街の外に被害が出ていることもわかった。そのため、これ以上の被害を防ぐため、ギルドとして事態の収集を図るべく動き出したのだ。


 まずは、鳥の正体を探るべく目撃者を探り、その鳥の特徴や行動パターンを調べていくことになった。そして、その鳥についての噂を聞きつけたある人物が名乗りを上げた。その人物とは、鳥の被害者であり、鳥が飛び立ったところを見ていた酒場の男だった。


 その男の名はイース。


 このあたりでは珍しい黒髪に青い瞳を持った青年で、年齢は20代前半といったところで背が高く細身だが筋肉質な体型をしていた。なんでもこの大陸を回りながら珍しい魔物の情報を集め本にするということをやっているらしい。


 ジーニーを含めこの街の大半の人がイースのことを胡散臭い人だと見ていたが、この鳥の話が出てきて以降イースの話に住民も聞き入るようになっている。ギルドとしては、この鳥の事件と無関係とは思えないので、彼に話を聞こうと思い、イースをギルドに呼び出したということだ。


 そして、今まさにその話を聞くところだ。

 しかし、その話はあまりにも信じ難いものだった。


 曰く、その鳥の名は「ナンギ」といい、空を自由に飛ぶことができ、人間の言葉を理解することができる。鳥はその人間から奪ったものをどこかに隠す。そして、その鳥に襲われた人間はどこかへ連れていかれる。


 どれも荒唐無稽な内容ではあるが、ジーニーはなぜかそれが嘘だと思えなかった。

 ジーニーは、目の前にいる男に質問することにする。イースはジーニーの問いに対し答えた。その内容は、ジーニーが知りたかった鳥の行動範囲や習性に関することはほとんど含まれていなかった。


 しかし、彼が言うには、この鳥の被害者は全員何かしらの商売をしているということだった。それを聞いたとき、ジーニーは何か嫌なものを感じた。

 そして、次にジーニーが尋ねたのはこの鳥が現れたと思われる場所のことだった。


「ああ、この鳥は多分この森の奥にある湖に住んでいると思うよ」


 そういって地図の一点を指差した。

 そこはこの辺りの森の中でも比較的大きな森であり、奥の方は森の外と比べて危険度が高いとされている森でもあった。


「どうしてわかるんですか? 」


「この鳥はね、僕たちが近づくと逃げるんだよ。だから、この鳥の住処は湖の近くにあるんじゃないかな」


「なっ! 」


 ジーニーは自分の耳を疑った。なぜなら、この鳥は街の近くでも目撃されていたからだ。


「それは本当ですか?」


「うん。まあ、あくまで僕の予想だけどね。ただ、僕は今まで多くの街に行ってきたけど「ナンギ」がこんな動きをするのを見たことがないんだよね。それで思ったんだけど、これは新種じゃないかなって思うんだ。そうなると、色々と調べてみたいと思ってさ」


 そういって楽しそうに笑うイースを見て、ジーニーは寒気を覚えた。

 そしてなぜ兄が彼のいう事をこんなに素直に受け入れるのか…

 この男は、危険な存在かもしれないと思ったのだ。


 そして、その考えは正しかったことを後に知ることになる。

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