第97話 ルブスト 09

 ライマンに聞いたダリオ商会。この街の裏の情報ギルドだ。

 その中に入ると、そこには髭面の男がいた。どう見ても堅気ではない雰囲気である。

 俺はとりあえず話だけでも聞こうと思い声をかけた。すると男は、 俺の顔をじーっと見つめてくる。その後、俺の後ろのメイテの顔を見た後、再び俺の方を見て、 メイテの方を見ながらニヤッとした表情を見せた。その後、俺の耳元で囁くように、 小さな声で話しかけてきた。


「おい、兄ちゃん。あんた、女連れか。しかも美人ときた。いいねぇ、羨ましいぜ。まぁ、いい、よろしくな。しかし、お前さんたち…… 何か用か? ここはガキが来るところじゃねえぞ。ん? なんだその顔は。俺が怖いのか? ははははは! そうか、俺が怖くてビビッてんだな。いいだろう。お前らのような奴らに、俺が何をしてきたか教えてやる。いいか、俺が今までやってきた仕事はだな……」


 と、いきなりマシンガントークで語り始めたのだ。どうやら彼は自分の武勇伝を話したかったらしい。そんな彼の話を遮るように、 俺は彼にある提案をする。


「おっと、話が長くなるのなら、今日はもう帰ろうかな。おれはライマンに用があってきたんだが」


「あ、待ってくれ。悪かった。つい調子にのっちまった。許してくれ。ライマン? ああ、そうか。お前がタイークイースか。ライマンから話は聞いてるぜ、裏に来な」


 そう言うと、俺とメイテは彼に案内され、裏の倉庫に連れてこられた。俺達をそこに残し、彼が姿を消す。しばらくすると、一人の男が入ってきた。

 その男は40代ぐらいで、頭はスキンヘッド、鋭い眼光、鍛え抜かれた体をしていた。その男はこちらを見ると


「セレオンだ」


 俺を値踏みするような目つきで見て、 一言だけ発した。

 俺も自己紹介をする。


「お前がノアか。それで後ろにいる嬢ちゃんは教会にいた嬢ちゃんのようだが?」


 その言葉を聞き、メイテも名を名乗り状況を説明する。セレオンはメイテの件はまだ他の誰にも言わない方がいいと言った。その後、セレオンは俺たちにこの街の現状について話をしてくれた。教会とカルン商会という街の復興で一番財を成し力のある商会の繋がりの話とこの街が現在どのような状況なのかを。

 俺たちも現状を話し、この街の教会組織を潰すために力を貸してほしいと頼んだ。セレオンは少し考え込んだ後、 協力すると言ってくれた。ただ、この街のことはこの街の住民が解決するべきだと、条件を話した。この街の闇を暴き、それを街の住民が解決したことにするのが条件だと。

 だがこれは俺の条件と一致していた。俺たちの情報を漏らさないことは現時点で最優先だ。俺もメイテもそれに了承し、契約が成立した。

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