第94話 ルブスト 06
「ああ、俺は昔冒険者だった。だからいろんな遺跡とかにもいったし珍しいものも見てきた。そのなかのひとつにその像に似たものがあったんだ。その時はなんとも思わなかったけどな。だが、今回のことで確信に変わった。ノア、その像は間違いなく教会にあって、しかもその像の近くにはなにかとんでもないものが封印されてるはずだ」
「とんでもないものとはなんだ?」
「それは俺にもわからねえ。俺はそこまで詳しくは知らないしな。だが、その像は絶対に壊しちゃいけないものだ。それに、その近くにいるだけでやばい代物だ。メイテがその近くに連れていかれたというなら間違いないだろう。あと、もう一つだけ注意してほしいことがある。その魔獣の召喚に成功したら、この国は滅びる。確実にな」
「この国が…… そんなことが……」
「ああ、俺は見たからわかる。あれはやばかった…… あんな物を使役したらこの国どころか、大陸中が滅ぶかもしれない。いや、世界が終わるかもな」
ライマンの言葉を聞き俺はメイテの方を見る。するとメイテも俺の方をじっと見つめ返してくる。彼女の瞳の奥には強い決意が感じられた。
俺はメイテに近づき小声で
―――お前の両親の仇を取りたいのか?
と聞く。彼女は小さく首を横に振る。
――わかりません…… 私のせいで両親が死んだんです。私にできる罪滅ぼしは何なのでしょう……
と俺に聞こえるか聞こえないかギリギリの声で呟く。俺はそれ以上何も言わなかった。
ライマンが話し終え静寂が続く。
とてつもない情報だった。だが、俺はどこか冷静でいた。なぜかは分からない。
ただ、話を聞いていて、あの時戦った黒い狼と蜘蛛を思い出す。
確かにあの時の魔物は強かった。
俺はあの時の感覚、大切な仲間を失った感覚を思い出しながら、再度ライマンに確認する。
「黒いローブの男はゾステファノス、まちがいないか?」
「ああ、奴はそう名乗ったそうだ。間違いねえよ」
「そうか……」
「どうした? ノア。ゾステファノスを知っているのか? いや、まてよ? 確かお前は……」
ライマンは俺の顔を見て何か思い出したようだ。
「ああ、あの時の狼だ。蜘蛛が言った狼の名前がゾステファノス。あいつらがアベルやパリー隊長を……」
「そうか…… そうだったのか。情報屋がそこにつなげられなかったとはな、俺も焼きが回ったもんだぜ」
「いや、あの時の狼の名前なんてライマンには伝えてなかったからな、しかたないさ」
「しかし、ノア。その狼がゾステファノスだとしたら…… 奴らは魔獣と人型の両方になれるってことじゃねえか!」
「うん…… そうなるね。そして翡翠の像…… まだ細い線だな…… そういえばライマン。カーミラについては何かわかったのか?」
「あ、ああ。そうだ。王妃カーミラ。こいつはノアが追っていた侍女カミラと同一人物だ。そして、その王女様なんだが…… もうすぐこの国の王になるぞ」
「え?! どういうことだ?」
「これはまだ情報が大きくなっていないんだが、王が崩御した。これは噂ではなく確定情報だ」
「王が!? なぜだ? 何があった?」
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