第93話 ルブスト 05

「いい目だ…… よし! 俺も腹を決めた。ただし、ここから先は命の危険もある。 俺の知ってることはすべて教えてやる。その代わり約束しろ、決して教会に復讐しようとか考えるんじゃねえ。もし、その気になったら必ず俺に相談してから動け!」


 メイテさんをじっと見つめながらライマンが答える。


「はい、わかりました。約束します。」


「じゃあ、始めるぞ。俺はお前の両親の最期を情報として知っている。あの日、教会に呼び出されたお前の両親は教会で話し合っている最中、魔物に襲われ殺された。 そして、教会の連中は、それをメイテの仕業として処理した。表向きはな……」


「表向き??」


 メイテが不安そうに尋ねる。


「ああ、本当のところは違う。あの時の魔獣の襲撃は教会自体が引き起こしたものだ」


「え? それはどういう??」


「落ち着け、メイテ。順を追って説明する。まずは最後まで聞け」


「あ、ああ…… はい、申し訳ありません」


 とメイテが言うとライマンは続きを話し始めた。


「教会は元々魔獣を召喚するために動いていたが、なかなかうまくいかずにいた。そんな中、一人の男が突然現れた。教会には似合わないが黒いローブの男だ、名前をゾステファノス、そいつが……」


「ゾステファノスだと!!」


 俺は大声で叫んでしまった。メイテとの話だと思い聞いていただけだったが思わぬ名前が出てきた。俺の声にメイテが驚くがライマンはそれを手を振って牽制する。


「ノア、待ってくれ。メイテの話を先に済ませる。ここは聞いてくれ」


 と言われ押し黙る。


「続けるぞ? いいな?」


 ライマンがそういうと、メイテも無言でうなずいた。


「わかった。続けてくれ……」


「ああ……」


 ライマンは一呼吸おいてまた語りだす。


「その男が現れたことで教会は動き出した。男は魔獣を呼び出す方法を教えてくれたらしい。だが、魔獣を呼ぶには大量の魔力が必要だ。そして、魔力を蓄えるには大量の人間が必要になる。そこで、ある計画を実行に移した。それが……」


「生贄か!! そうやって多くの人を犠牲にしたのか!」


「そうだ! その通りだ。だがそれだけじゃない。奴らはさらに多くの人間を集めようとした。そのためにメイテを誘拐しようとしたんだ」


「まさか!? メイテの両親が死んだのは……」


「ああ、おそらく、メイテを餌に他の人たちをおびきよせようとしていたんだ。そしてここからがノアの求めていた情報だ。魔獣化にはある像が必要らしいんだ」


「像?」


「ああ、その像は翡翠の像を象ったものらしく、その像が教会にあると噂があるんだ」


「翡翠の像…… それで、その像はどこにあるんだ?」


「まだわからない。ただ、教会に隠された場所がありそこに安置されているという噂だ」


「そうか……」


「どうしたんだ? ノア。急に黙り込んで」


「いや、なんでもない。とりあえず、メイテの両親の件は理解できた。でも、それとメイテが教会に囚われていたことと何か関係があるのか?」


「ああ、実はな…… その像というのは俺が昔見たことがあるものと同じなんだ」


「ライマンさんが?」

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