第81話 ストビー 04

「おお、来たか。 待っていたぞ!!」


 狼は両者に近づくように地上に降り立つ。狼の上には…


「「カーミラ!!」」


 両者が同時に叫ぶ。二人の視線が交差する。クロード王は言葉を失い、憎しみを込めた目つきで睨んでいる。一方、バルバロッサは、歓喜の声と共に両手を広げカーミラに近づこうとする。

 その時、カーミラが口を開いた。

 今まで聞いたことがないほど冷たい口調である。

 それは、まるで別人のようであった。


「王よ、クロード王よ……」


 その一言を聞いた瞬間、クロード王の身体は硬直し動けなくなった。

 クロード王は、恐怖を感じている。クロード王の身体は震えていた。

 クロード王の脳裏には、カーミラの瞳の記憶が蘇る。


 やはりあの瞳は……


 そして、ゆっくりとクロード王の方を見て冷たく微笑む。

 クロード王は恐怖を感じる。


「かわいそうなクロード王、私の大切な……」


 それを聞いたクロード王は安心したのか、ほっとした顔になる。


(これで助かった……)


「王よ、お逃げください!」


クロード王の隣りにいたガレスが叫ぶ。


 そう思った瞬間、クロード王の身体はガレスとともに真っ二つに引き裂かれる。


「……駒」


 カーミラは不敵に微笑む。そして、地面に落ちたクロード王の身体を踏みつける。

 クロード王を真っ二つにしたバルバロッサは、一瞬動きを止めたが、すぐに行動に移す。

 カーミラの前に跪き、


「王よ。カーミラ王よ、私はあなたに永遠の忠誠を誓います。この身が朽ち果てるまで……」


 そう言うと頭を下げる。

 そして、再び顔を上げ、


「我が王よ、まずはこの邪魔者どもを片付けましょう」


 そう言うと、クロード王の死体の方に手をかざす。

 するとクロード王とガレスの死体から黒い霧のようなものが出て来て、クロード王の遺体に吸収されていく。

 二人のモヤを吸収し終わった黒い霧が、徐々に人型に変化していく。

 そして、黒い甲冑を着た騎士のような姿に変わった。

 その姿を見てカーミラは嬉しそうな表情をしてバルバロッサに話しかける。

 先程までの冷酷な声ではなく優しい口調になっている。

 その様子は本当に同一人物なのかと思うほどだった。


「ご苦労様、バルバロッサ。私の愛する人。これからもずっと一緒にいてくれるわよね?」


 バルバロッサは、笑顔で答える。


「はい、我が王。あなたの傍を離れません」


「ありがとう、愛してます。バルバロッサ……」


 そう言うと、二人は熱い抱擁を交わす。

 その様子を見ていた兵士たちは動揺していた。

 兵士たちもバルバロッサがクロード王を殺した事は分かっているが、まさか自分の主人が殺されるとは思っていなかったのだろう。


「あの方が…… 我らの王が殺された……」


「そんな…… 嘘だろ……」


「なんという事だ…… 王を守れなかった……」


「なんてことだ…… どうすればいいんだ……」


 兵士の動揺は広がり混乱状態になっていく。

 そして、我先にと逃げ出そうとする。だが、バルバロッサがそれを見逃すはずがなかった。逃げた者は次々と斬られていった。

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