第80話 ストビー 03
振り返ると魔物たちが建物を破壊し、人々を襲っている姿が目に入る。
(なんて事だ……)
ガレスは悔しさに唇を噛みしめながら、ひたすら走った。
そして森に辿り着くと、そこで立ち止まる。
目の前には大量の魔物がいる。
とても突破できるような状況ではない。
しかし、ここで止まれば間違いなく殺されるだろう。
ガレスは覚悟を決めた。クロード王だけでも守らなければならない。
ガレスが剣を抜き構える。
すると、魔物たちも戦闘態勢に入り、一気に飛び掛ってきた。
無数の牙や爪の攻撃を避けつつ、攻撃を行う。だが、さすがのガレスでも多勢に無勢である。次第に傷が増えていく。
ガレスは、クロード王を守りながら戦う事は不可能だと判断した。そして、自分の命と引き換えにしてでもクロード王だけは逃がそうと決意した。
(すまない、我が君……
私の命に代えても必ず守るから許してくれ!!)
そう思いながら最後の力を振り絞り、攻撃を仕掛け一陣の風が吹き抜け一瞬にして魔物たちを切り裂く。
しかし迫りくる魔物の群れは収まることなく襲い掛かる。
その時、魔物の群れが急に二手に分かれ道が現れ、大きな黒いモヤが近づいてくる。
それは漆黒の鎧のような黒いモヤに身を包み、腰には二本の剣を携えている。その姿を見たガレスが驚きの声を上げる。そして、その名を叫んだ。
ガレスが驚くのも無理はない。なぜなら、その男はバルバロッサ、いやバルバロッサだったものだった。バルバロッサはクロード王の前に立つと威圧感を感じる声で静かに語りかける。
「みじめなものだな… こやつがこの国の王とは… 私を裏切るからこうなるのだ…」
魔物の姿をしたバルバロッサが言う。
クロード王は意識を取り戻し、その姿を見て驚いた表情をしている。
「な、なぜだ? 魔物の姿?! なぜじゃ? なぜ??」
クロード王が信じられないという顔をしている。
「クッハハッ、そんな事は決まっている。この世界を私が手に入れるためよ。 邪魔な人間どもを排除し、新たな国を作る。 その為の力を手に入れたのだ!!」
バルバロッサは体を大きく揺らす。
「ばかな…… そんな事が許されるはずがない…」
クロード王が呟くように言った。
「ふん、貴様に許可など必要ない。 これは決定事項なのだ。 今更、何を言っても無駄だ」
「ぐぬぬ…… お主は何なのだ!! カーミラは… カーミラは私が王だと…」
クロード王が必死の形相で問いかけた。
「カーミラだと? ……何を言っている…… カーミラは私の女だ!」
「き、貴様… カーミラは……」
クロード王が言いかけたところで、バルバロッサが遮るように言う。怒りを含んだ低い声だ。
その表情からは怒りと憎悪が入り混じっているように感じる。そして、クロード王に近づいていく。
その時、上空から凄まじい殺気を感じた。上を見ると巨大な狼が飛んでいた。
その存在感は圧倒的で、この場にいる魔物たちよりも強いと感じる。
バルバロッサが空を見上げながら何かを言った。少し笑っているように見える。
そして、両手を広げて歓喜の声を上げた。
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