第79話 ストビー 02
翌日、ストビーの町は、魔物の大群によって蹂躙される。
「あぁ…… なんて事だ……」
一人の兵士が嘆く。
「もうダメだ……」
別の兵士が膝から崩れ落ちる。
「諦めるんじゃない! 最後まで戦うんだ!!」
一人の若い兵士が叫ぶと、周りの兵士は気を取り直す。
「そうか、お前は新入りだったな。 すまない、弱音を吐いてしまった。 そうだな、俺たちにはここを守る義務がある。 最後の一人になっても戦い抜くぞ!!」
「ああ、その意気だ! よし、みんな行くぞー!!!」
『オォッ!!』
「隊長殿、敵の勢いが止まりません。 このままでは持ちこたえる事はできそうにありません。 どうか撤退の許可をお願いします!!」
「馬鹿者!! そんな許可が出せるわけが無いだろうが!!」
「し、しかし、このままでは全滅してしまいます!!」
「もうすぐ王都軍が救援に来てくれるはずだ! しばらく耐えろ!!」
「そんな…… 無理です! このままでは全員殺されてしまう! 誰か助けてくれぇー!!」
その悲痛な叫びが響き渡る。
「くそぉ…… どうしてこんな事に……」
その時、上空に大きな影が現れる。
「あれは…… 狼!?」
「バカな…… 魔物がなぜ空を飛んでいるんだ……」
突然現れた巨大な黒い翼を持った魔物が、次々と地上に降り立つ。
グオオオーーンン!!
そして、魔物たちは一斉に雄たけびを上げると、人間の兵士に向かって走り出す。
「くそっ、来るな!! うわぁぁー」
兵士達は、必死に抵抗するが、魔物たちの方が数が多く、徐々に押し込まれていく。
その様子を見ていたクロード王が声を張り上げる。
その顔からは、血の気が引いているように見える。
その様子に気づいたガレスが、クロード王に近づき尋ねる。
その表情はとても険しい。
そして、クロード王の様子に違和感を覚えた。
(様子がおかしい。 まさか……)
ガレスの予想は当たっていたようだ。クロード王が呟くように言う。
その目は虚ろで焦点があっていない。
「カーミラは言ったのだ… 私が… 全ての頂点に立つと……
だから私は……
この世界を手に入れると決めたのだ……」
「クロード王、しっかりしてください。あなたはこの国の王なのです。正気に戻ってください!」
ガレスの言葉は届いてないようであった。
「ガレスよ、この国を守ってくれ… 頼む……」
クロード王はそれだけ言い残すと意識を失った。
「なんということだ…… 王は操られていたのか? 一体誰がこのような事を……」
「ガレス様、魔物が町に侵入して来ました!」
「なにぃ!! くっ、仕方がない。ここは食い止める。貴公らは王を連れて早く逃げるのだ!!」
「は、はい」
「よし、行くぞ!!」
「お、おう!!」
「ぐあっ」
「ぎゃあ」
「た、隊長……
うぅ……」
「うわぁぁ!」
魔物たちに蹂躙されていく兵士たち。
クロード王は意識を失っており、誰も助ける事ができない。
「くそっ…… どうすれば……」
「ガレス様! こちらへ、この方角なら魔物が少ないようです」
兵士の一人が叫ぶと、ガレスもすぐに反応する。ガレスは、クロード王の身体を抱きかかえ走り出した。町の出口に差し掛かった時、後ろから大きな音が聞こえてくる。
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