第78話 ストビー 01

 ルダークから逃れてきた人々の証言では、町を襲った魔物たちのほとんどが黒い霧に包まれ、恐ろしく統制の取れた行動をしていた。魔物の中には人語を話すものも存在し、その魔物達の命令で他の魔物が行動しているようだったと話していた。その証言を聞き、討伐軍の兵士たちの間に不安が広がる。今まで見たことも無い強力な魔物の存在……。

 そして、その統率された動きに恐怖を覚える。その話を聞いた貴族たちの中にも、ルダークの惨状を聞き及び、怯える者もいた。

 しかし、一部の人間は違った反応を示していた。

 クロード王の側にいた貴族や騎士団長たちである。彼らは、今回の件について話し合っていた。その表情は真剣そのもので、中には眉間にシワを寄せ険しい表情をしている者もいる。

 そんな中、ある男が口を開く。

 騎士団長の一人であるガレスという男だ。彼は、元王国騎士であり、現在は冒険者として活躍している。年齢は四十代後半だが、鍛え上げられた肉体を持つ精強な戦士だ。今回の魔物の接近により王軍に傭兵として参加し、傭兵団の団長となっていた。

 その鋭い眼光は見る者を圧倒させる力がある。

 その男がゆっくりと話し始める。

 まず、今回の件で分かったことを皆に伝える。


「逆賊バルバロッサはどのような手を用いたかわかりませぬが魔物を操っておるようですな。そしてその魔物に我々を襲わせている」


「そうだ、奴らは我々の事を知っていたのだろう。でなければ、こんなにも的確に攻撃してくるはずがない」


 クロード王が答える。


「その通りだと思われます。しかも、こちらの戦力を計った上での攻撃……恐らく我々の情報を正確に把握しての事でしょう」


「ふぅ……厄介だな。それで、これからどうする? このまま撤退するのか?」


「いえ、それは危険でしょう。この機に乗じて何か仕掛けてくる可能性があります。それこそ、王都に直接攻め込んでくる事も考えられます」


「うむ、確かにあり得るな。そうなると、ここは耐えるしか無いと言うことだ」


「はい、しかし、この先の戦いを考えると……難しいかと」


「そうか……」


 クロード王は腕を組み考え込む。


「やはり、ここで一気に叩くしかないかもしれません」


「では兵力を全て投入し、総攻撃をかける。部隊を左右に分け、魔物をやり過ごし挟撃を仕掛けるのだ。おそらく敵は魔物を先にこちらに当てその後進軍する予定でいる筈。そこに、我らが総攻撃を仕掛ければ……」


「クロード王! しかしそれではストビーの町が魔物に蹂躙されてしまいます!!」


「そうだ…… だが、それがどうした! 早速準備に取り掛かれ! 明日、侵攻を開始する!」


「王よ! お考え直しください!! 万一我らの挟撃が失敗すれば…」


「うるさい!! 失敗しなければよいのだ! ええいっ!! これ以上の議論は無用だ!!」


 クロード王は決断した。そして、すぐさま各部隊に指示を出す。

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