第77話 不明

 カーミラは黙ったまま椅子に腰掛け、窓の外を眺める。


 この国が大きく揺れ動く。


 カーミラは知っている。

 自分がこの国を変えることができるということを。そして、その時はもうすでに始まっているということも……。


(バカな人たち… 私たちが描いた絵だとも知らずに…)


 クロード王とバルバロッサ伯爵の全面戦争が近づいている。

 さらにバルバロッサ伯爵はを使用し魔物化している。


(ほんとうに救いようがないわね…)


 カーミラは静かに笑みを浮かべる。


(でも、これでいい……。私に逆らうものは全て消え去る……。そして私は本当の意味でこの国の神となり、この国の全てを手に入れる)



 カーミラの目は怪しく光る。

 彼女はその日が来るのを待ちわびている。

 そのための準備はすでに整っている。


(あと少しで私は……。 私は……)


 カーミラの瞳が赤く怪しく輝き始める。


 そして月明かりに映し出される彼女の影は狐のような姿をしている。尾がいくつもある狐のようだ。その瞳からは一筋の涙がこぼれ落ち、頬を伝っていく。


(もうすぐ…… もうすぐ…… 会える……)


 その瞳から流れる涙は止まらない。

 カーミラはただひたすらにその時を待つ。そう、それをカーミラが待ち望んでいる。


 カーミラの思い描く理想の世界まであと少し。


 その世界はもうすぐ手に入る。



 三年前の魔物大襲撃で成功をおさめたカーミラは一人ほくそ笑む。自分の思い通りに進む世界を見て自然と笑みが浮かぶ。

 三年前、いや準備期間も入れるともっとずっと前から魔物大襲撃の準備を進めていた。


 そして、これから起こるであろう出来事を思い描きながら大きく息を吐く。彼女はこれから起きる悲劇の幕を開ける。


 その日、ストビーの町は戦場となる。

 その戦いが終わった時、この国に生きている者のほとんどが悲しみに打ちひしがれるだろう。

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