第75話 シラリ 04

 バルバロッサはシラリでの成果に笑みを浮かべていた。まずは、シラリを潰すことに成功した。冒険者どもが逆らってきたが結果、戦力の補給になった。

 そして、次はルダーフの町か。


 今、その村に先行部隊を送り込んでいるところだが、報告によるとかなりの被害を出ているらしい。まぁ、それも当然のことであろう。なんせこちらには、上級魔獣であるゾステファノスがいるのだからな。


 さて……


 バルバロッサは、これからの戦略を考える。この調子でいけば、すぐにでもルダークを落とすことができるはずだ。そうなれば、ルダークを拠点にして一気に王都レムサまで攻め込むこともできる。

 そうだな……


 われらの進行する周辺の村を攻め落としていくか。まずは、ルダーフだ。クロード王らを早めに叩いておくべきだろう。

 バルバロッサの思考は魔物に変わったあと徐々に元に戻ってきている。それは、この体に慣れてきたということと、元の記憶が残っているからだと思われる。しかし、バルバロッサは気づいてはいなかった。その記憶こそが、バルバロッサにとって最大の弱点になっていることを。バルバロッサは、配下の魔物に指示を出すとルダークに向けて進軍を始めた。



ーーーーーー



 ロッシュは、蜘蛛に殺されたはずだった。そして自身の身体が人のものでなくなっている事実に驚愕する。


 ここは……


 どこだ?


 それに……


 なんだこの体は…


 目の前の鏡に、自分の身体が映っている。

 手も足もある。今までの人の身体ではなくなっているが…


「ガアァアアッ!!」


 ん? なんだ今の鳴き声は?


  まるで……


 魔物……


 ロッシュは自分の姿を確認すると、その姿はまさに、熊の魔物そのものの姿になっていた。


 ……どういう?


「ガアアッ!!」


 また、声が出る。やはり、声帯まで変化しているようだ。


 周りを確認しなければ……


 ロッシュは立ち上がり、自分の体をくまなく確認する。


 腕、足、頭……。


 目…口…


 どう見ても人間ではない。

 なぜこんなことになったんだ?


 ロッシュは、考えをまとめる。


 あの時、蜘蛛に攻撃された。


 その時に俺は死んだんだろう

 

 あの時確か「翡翠の小像」が目の前に…


 だめだ…

 

 思考が停滞していく。

 

 考えられない…

 

 頭にがかかる


 ココはどこなんだ?


 腹がヘッタ…


 ナニかタイセツなことをワスれている気がする…


 ハラがヘった…


 ナンダ??


 もう…カンガエラレナイ


 ナニかクウもの… ノドがカワく…


 ダレカのコエがキコエる…


 あのコエには… サカラエない…


 ススム… ススマナケレバ…


 モウ… カンガエナイ…


 カンガエ…


 カ…gエ…


 「…グッガアァアアッ!!」


 

 魔物が吠える



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