第74話 シラリ 03
その後も、魔物との戦いが続き、ロッシュたちは少しずつ体力を奪われていく。
そして、遂にその均衡が崩れ始める。
(いよいよ…… ここまでか……)
その時、魔物の群れの中にいる一際大きな気配が再び近づいてくる。
(まさか……)
その予感は的中した。魔物の群れの中から一際大きな気配を感じる。それは、3年前にロッシュの娘の命を奪った巨大な蜘蛛だったのだ。
その姿を見たロッシュは言葉を失う。
(なぜだ…… なんでこいつがここにいるんだ……)
ロッシュは、その姿を見て、一瞬足が止まる。
「ガオオォオオッ!!」
その声を聞いたロッシュはすぐに我に返り、戦闘に集中する。しかし、先程までの戦いにより、ロッシュたちはかなり消耗していたのだ。身体が思うように動かない。
「まずい!! みんな!! 逃げろ!!」
ロッシュは、必死で叫ぶが時すでに遅く、蜘蛛の攻撃が襲ってくる。
「くそっ!! 間に合えぇえっっ!!」
ロッシュは、最後の力を振り絞り、仲間の元に駆け寄ると、そのまま抱えて蜘蛛に近づく。
「グォオオッ!!」
バキィ!! ドゴーン!!
蜘蛛は、仲間を抱えて走っているロッシュに対して、糸を放つ。ロッシュは、間一髪で避けるが、避けきれず足に直撃してしまう。その衝撃でロッシュは、倒れ込む。
「ぐぁあああっ!!」
ドサッ
「ロッシュ!?」
仲間がロッシュに呼びかけるが、返事はない。
「ガオオォオオッ!!」
「ロッシュ! ロッシュ!!」
「みんな!! 来るぞ!! 早く逃げるんだ!!」
仲間達は叫び、蜘蛛から離れるように後退していく。
「うわあああっ!!」
仲間の1人が叫び声をあげると、その仲間が立っていた地面が大きく陥没する。
「ひぃいいいっ!!」
「なんだこれ!! どうなってんだよぉおおお!」
他の仲間達もその光景を見てパニックに陥る。しかし、そんな事をしているうちにロッシュを抱えていた仲間が襲われてしまう。
「やめてくれ!! 頼む!! 助けてくれ!!」
仲間は、ロッシュを置いて逃げ出す。
「嫌だ!! 死にたくない!!」
「助けて!! 誰かぁあああっっ!!」
その言葉を聞きながら
(俺は…… まだ死ぬわけにはいかない!! 俺が死んだら…… 街を誰が守るんだ!)
ロッシュは薄れゆく意識の中、自分の命よりも大切な存在を思い出していた。
(ミーヤ…… お前にもう一度会いたいよ……)
ロッシュは、最後にそう思い、深い闇に沈んでいった。
…………………………
それから、どれほど時間が経ったのかわからない。ロッシュは、目を覚ますとそこは暗闇の中で何も見えない。
(ここはどこだろう? 俺は死んだはずじゃ……)
ロッシュは混乱しながらも、状況を整理しようとする。
(確か…… あの時…)
突然、大きな叫び声があちこちから聞こえる。
「ガアァアアッ!!」
「グルルル……」
「ガアアッ!!」
「ガアアッ!!」
「グオォオオンン!!」
「ガアアッ!!」
「ガアアッ!!」
「グルルル!!」
「ガアアッ!!」
ロッシュは突然、激しい頭痛に襲われる。
頭が割れるように痛む。
そして、頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚に襲われている。
(な、何が起こっているんだ?)
ロッシュは、痛みに耐えながらも、この現状を理解しようとする。
突如視界が開ける。
そこには見覚えのある風景が広がっていた。
この景色は、かつて自分が暮らしていた町だ。
懐かしさと共に
破壊されていく町を見ている自分に気づく。
いや
破壊している自分に
(何をしているんだ?)
(俺は…)
(俺が…)
「ガアァアアッ!!」
(…魔物なのか?)
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