第72話 シラリ 01
翌日、シラリの町の冒険者ギルドマスターのロッシュは斥候からの報告に愕然とする。コルダラ方面から魔物の群れがここシラリに近づいていると報告があったのだ。魔物の群れは、おおよそ800体に及ぶ規模であるという。
なじみの冒険者達をかき集めて説明し、何とか防衛体制を整えることができ斥候も出せたが、それでも不安が残る。このまま戦闘を開始するべきか、町を放棄しストビーの町に向かうのか。町長とも話し合ったがなかなか結論が出ない。時間がない。
その時、一人の冒険者が血相を変えて飛び込んでくる。
その冒険者は、町の近くにある森の中で大量の魔獣を発見したという報告をしてきた。
(ッチ! 間に合わなかったか!!)
ロッシュは、その知らせを受け、すぐに準備を整え、その魔獣の元へと向かう。
「おい! ロッシュ! 一体どうなってんだ! 」
「ロッシュさん! 説明してくれ! 」
「なんだか大変なことになってますね……」
「ロッシュ! どういうことだ! 」
「ロッシュ殿! 」
「ロッシュ様……」
ロッシュは、集まった仲間たちに現状を説明する。
「みんな落ち着いて聞いてくれ……。今、シラリの町に魔物が迫ってきている。しかも、ただの魔物じゃない…… 3年前の襲撃以上の魔物が複数いる可能性がある……」
「なんでそんな魔物がいるんだよ……」
「そんな…… そんなの勝てるわけないじゃないか……」
「落ち着けって言ってるだろうが!」
ロッシュの言葉に皆が動揺する中、一人の女性が声を上げる。
「ロッシュ…… 私達がなんとかするしかないでしょう…… ここで諦めたら今まで戦ってきた意味が無くなるわよ!」
その言葉を聞いたロッシュは、目を瞑りしばらく考え込むと、目を開く。
「そうだな…… 俺達は、この世界で生きる為に戦っている…… こんな所で死んでたまるか! 俺は行くぞ! お前らはここに残れ!!」
「何を言っているの!? あなただけ行かせる訳にはいかないわよ!!」
「そうですよ!! ロッシュさん!! 僕だって行きます!!」
「ロッシュ殿!! 我輩も行こう!! 」
「そうですね…… ロッシュ様に付いていきましょう!!」
ロッシュは、仲間達に礼を言うと、早速行動を始める。
「よし!! お前ら!! ついてこい!!」
ロッシュは魔物と遭遇した際のフォーメーションを伝え、仲間と共に森の奥へと進んでいく。そして、とうとう魔物の集団と遭遇する。そこには多くの魔物がいた。そして、その中に見覚えのある魔物もいた。3年前のあの魔物だ。娘を殺した… 娘を殺した奴だ!!
ロッシュは、その姿を見つけると、怒りの感情を抑えきれずに走り出す。
剣を抜き放つ。その剣からは、黄色いオーラがほとばしり剣を包む。その剣を振り下ろすと、目の前にいた魔物は真っ二つになり絶命する。その光景を見た他の魔物たちは、一斉に襲い掛かってくる。
それを合図に冒険者たちも魔物に攻撃を開始する。
ロッシュたちは、次々と迫り来る魔物を切り伏せていく。
その様子を見た魔物たちの間に動揺が走る。
「うおぉぉぉぉ!!」
「ガアァァッ!!!」
「グォオオオオンン」
ロッシュたちは、魔物たちに止めをさすべく斬りかかっていく。そのスピードはどんどん加速していき、目にも止まらぬ速さで魔物達をなぎ倒す。
「はぁああああっっ!!!」
「ギャウゥ……」
「グルルルル……」
魔物たちを次々に倒していく。その姿はまるで暴風のように魔物を仕留めている。
しかし、魔物の数は多く、また、統率が取れているようで、一匹たりとも逃げようとしない。
(キリがないな…… このままでは……)
ロッシュは、一旦魔物たちと距離を取り、仲間の方に視線を向ける。
すると、仲間の方からも魔物たちが押し寄せてきていた。
(まずいな…… こっちもか……)
ロッシュは、もう一度魔物たちの群れに突っ込み、今度は魔物の群れの真ん中に向かって突き進む。魔物の群れのど真ん中まで来た時、魔物の群れは左右に別れ始め、ロッシュはその間を駆け抜ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます