第71話 コルダラ城塞都市 05

 バルバロッサは、自分の問いかけに答えない目の前の男に苛立ちを覚え始めるが、それを見越したようにローブの男は話しかける。


「バルバロッサ様。クロード王はストビーの町付近に拠点を構えております。ここは一気に王都を目指され、その道すがらクロード王を討伐されるというのはいかがでしょう? もちろん私も同行し協力をさせていただきたく思います」


「ナルホド…… そうするカ…… まずハ…… あのゴミクズどもヲコロスことが先決ダ!! ワタシの力を見せテヤル!!」


 バルバロッサは、剣を構えるとその剣に魔力を流し込む。その瞬間、剣から黒いモヤが立ち上り、その勢いを増していき、そのまま剣を振り下ろすと、地面に向かって斬りかかる。

 すると、まるで巨大な獣の爪痕のような跡が地面に刻まれる。


 バルバロッサは、ニヤリと笑うと、その剣を天に掲げて叫ぶ。


グルオオオオオオオオオ!!!


 その雄叫びは、辺り一帯に響き渡り、遠くにいた鳥たちが一斉に飛び立つ。

 その一撃を見たローブの男は満足げにうなずくと、再びフードを被りその場から消える。バルバロッサは、それを確認するとゆっくりと歩き出す。

 その視線の先には、まだ息のある傭兵団の姿があった。バルバロッサは再びあの翡翠色の小像を取り出し傭兵団に向けて投げ込む。そして、再び力を解き放つと、傭兵団を黒いモヤが包み込み始め、傭兵団全員を取り込み終える。しばらくすると傭兵団員だった者たちはその姿を変え、魔物の姿になっていく。

 バルバロッサは、その光景を見て満足げにうなずくと、ゆっくりとした足取りで魔物達を引き連れストビーの町へと向かっていく。圧倒的な力を誇示しながら……



ーーーーーー



 コルダラから一番近いシラリの町ではコルダラから逃れてきた人たちであふれかえっていた。多くの人は、怪我をしており、まともに歩けない人や家族を失った悲しみに打ちひしがれている者、中には魔物に殺されてしまった者を抱えている者もいる。情報は錯綜しコルダラで何が起こったのかさえよくわからない状況だ。しかし町長の下に集められる情報すべてがコルダラ城塞都市が魔物達によって壊滅したという事実だった。


 そんな中で、ある噂が流れ始める。それはバルバロッサと名乗る魔物が現れたという話だった。

 その話を聞き、この町のギルドマスターであるロッシュは、バルバロッサという名前の魔物が城塞都市の壊滅に関与しているという情報を耳にする。バルバロッサとは言うまでもなくコルダラ城塞都市の城主であり、伯爵の名だ。いくらとんでもない魔物が現れたところで城主の名前を付けるのはさすがにセンスがないなどと考えていたが、情報を集めと伯爵自身が魔物化したなどという話も出てきて頭を痛める。伯爵は3年前の事件以来、傭兵団を指揮し魔物を討伐していた最前線の責任者だ。その人が魔物になったなど信じたくない気持ちもあるが、もし本当だとしたら一刻を争う事態になる。

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