第70話 コルダラ城塞都市 04

「グルァ!! グハハハハ!! ワタシm ツイn ワタシnモ チカrダ!!」


 その言葉と共にバルバロッサだった魔物は城塞都市内に攻撃を行う。バルバロッサの放った攻撃により城塞都市内はさらなる混乱に陥る。追い打ちをかけるように新たに生まれた魔物達はバルバロッサの命じるままに城塞都市を蹂躙していく。


 この日、コルダラの騎士団と傭兵団はその姿を消し、周辺の町や村の住民もこの魔物達によって壊滅した。城塞都市は壊滅し、街は火の海と化していた。かつての城塞都市の面影はなく、ただの廃墟と化した街があるだけだった。



 その夜、街の中心部にある広場では、バルバロッサが悠々と歩いていた。広場の周りには、魔物の群れと先ほど生まれた死体兵士と思われる魔物達がひれ伏している。バルバロッサは、自分の周りを見渡す。

 ゆっくり手を振り上げる、と同時にその手から黒い波動のようなものが現れる。それを確認し、一気に手を振り下ろすと地面が大きく揺れその衝撃波で魔物達の体を吹き飛ばす。魔物達はまるで人形のように簡単に吹き飛ばされていく。

 バルバロッサは、その様子を見て不敵な笑みを浮かべる。バルバロッサが立っている場所を中心に周囲はまるで嵐が通り過ぎたかのように荒れ果て、瓦礫の山が出来上がっている。さらにバルバロッサは、手に持っていた剣を一振りする。すると、剣から風が巻き起こり、周囲のものを切り裂いていく。



「ミナノモノ!! コノママ オウトニ セメコムノダ!!」


グルォォ!

キエエエエエ!

グオー!


 バルバロッサの呼びかけに応えるように大きな叫び声や鳴き声が聞こえてくる。




 突然バルバロッサの目の前に黒いローブを纏った一人の男が現れる。


「バルバロッサ様、ついにお決めになれたのですね」


 ローブの男は不敵に笑いながらバルバロッサの言う。


「オマえか…… イマさらなんノようダ」


「ふっ、私はあなたの忠実なる僕ですよ。バルバロッサ様」


 男はそう言ってフードを脱ぐ。その顔は不気味な仮面で覆われており、その素顔を見ることはできない。


「フンッ! ソレデ? オマエはナンのためにココへキタ!」


「あなたこそなぜこのような事を?」


「ワタシは、カーミラを取りモドし王となる!  ヤツらにわたしのちからを見せてやるのダ!!」


 バルバロッサは拳を握りしめ怒りに満ちた表情で答える。


「なるほど……」


 そんなバルバロッサの考えとは裏腹に、目の前にいる男の瞳には狂喜の色が浮かぶ。


(妄執ですか。まさかバルバロッサが本当にここまでやるとは…… 面白くなってきましたねえ)


 組織の見立てとは少々違っているが構わない。ここまでやってくれるならバルバロッサを祀り上げるという手立てでいこうと決意する。


(その人の為ならば、世界を滅ぼすこともいとわないなど、本当にばからしい。あの方のおっしゃる通りだ。人などでいる限り、そこからは抜け出せないものだな)


 そう思うと目の前にいる男が滑稽に思えて仕方がない。だが、それもじきに終わるだろう。この男の役目はもう終わりを迎えているのだ。後は、自分に任せればいい。その為に自分はここにやってきたのだから……

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