第60話 ロスベラ 04
レイナは、今日のことを思いだす。
突然の出来事で頭が回らなかったが、改めて考えると恐ろしい状況だった。レイナが震えていることに気づき、ノアが優しく話しかける。
「ここ3年でこの近辺で目撃されているこの地域にいなかった魔物は3種類。そのどれもが人語を理解し、喋ることができるんだ。ただし、最初はオーガ・狼・蜘蛛の魔物も人語を話しているわけではなくある程度の期間が経つと話し始めるようなんだよ」
レイナは驚きを隠せない。
ノアはレイナを見つめながらさらに話を進める。
「そして今日。実はあの廃屋には情報屋が待っているはずだったんだ。そして俺たちが今日あそこで情報屋に会うことをわざと触れ回っていたんだよ。案の定、あの場に…地下室に蜘蛛の魔物が現れた。俺が指定した場所に、周りには全く魔物の気配もなかったのにだ…。つまり、俺たちに知られたくない奴らは、俺たちが今日廃屋に行くことも、情報屋に会おうとしている事も、全て把握していたってことになるんだ。」
「じゃ、じゃぁ……誰が私たちの情報を流したの?」
「それはわからない。だけど、あの蜘蛛の魔物は間違いなく俺たちを狙っていた」
「でも、なんで?」
「俺たちだからなのか、情報を集め始めた奴全員なのか?」
「えっ!?」
「いや、ここまで俺たちは3年前の事件を中心に追ってきたけど、この3年で状況は一変したよね。冒険者の役割も大きく変わり、冒険者それぞれがこの状況の情報を集めている」
ここでノアは大きく息を吐く。
「そして、騎士団の壊滅、傭兵団の拡大、王が変わり王都の遷都、一向に終わりの見えない魔物の跋扈。この流れに俺たちが追っていた事件を重ねると…」
「ノア達はレムサに行方不明になった商会の息子さんの消息を探るためにレムサ領の子爵の商会のカミラに会いに行くところだったのよね…」
「ああ… そして。現王の妃、王妃の名前は…」
「カーミラ!! 嘘でしょう???」
「そうだね、最初は偶然だと思ったよ。でも…、調べてみてわかったんだ。もともと子爵家で働いていた侍女カーミラはその後、現クロード王とつながり子爵家の立ち上げた商会で魔道具の販売を開始した。この魔道具が王国全土に広がり、子爵は今では傭兵団を拡大させ続け魔物討伐の第一人者で伯爵位。カーミラは侍女から商会会頭、その後貴族位を与えられ、今では王妃におさまっているんだ」
レイナはあまりの衝撃に声が出なかった。そして、ようやく絞り出すように口を開く。しかし、その表情には恐怖の色が見える。
ノアはレイナに優しく微笑みかける。レイナもなんとか笑顔をつくる。少し落ち着いたのか、先程より冷静になっていた。
ノアはレイナの様子を見て、少し安心する。
(やっと敵の姿が見えてきた。エレナ、リリアナ…もうすぐだ…待っていてくれ)
レイナは何かを決意したような表情のノアをじっと見つめていた。
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