第56話 3年後

 カーミラがクロードとバルバロッサと取引を開始して3年後、王国内に異変が起こった。魔獣の被害が多発しはじめたのである。

 最初は魔の森近くの村が襲われるという被害から始まった。その後、なぜか町や村の中から突然魔物が現れだしたり、森の奥から続々と魔獣たちが溢れ出し、村や街を襲い始めたりしたのだ。

 勿論、王国騎士団による討伐が行われたが、魔獣たちは強く、さらに増え続け、今や王国の町や村は約半数が魔物によって壊滅させられていた。

 かつての王国は壊滅しすでに機能していない状態だ。各領も似たような状態で、魔物に襲われていない地域では自領を守ることが精いっぱいであり、しかも領内でいつ魔物が現れるかわからず、身動きが取れない。すでに魔物に壊滅された地域はさらに悲惨で、ほぼ機能しておらず領民は無事な地域に難民として流入し、これ以上の混乱が続けば王国存亡も危ぶまれる状態であった。


 そして、王都も例外ではなかった。

 突如現れたオークの大群に、騎士達は為す術もなく殺されていった。王都は魔物に蹂躙され、すでに壊滅状態であり、王城も魔物による攻撃で半壊し、機能を停止し、その際、王都にいた王族・貴族のほとんどが魔物の餌食になっている。

 その際の戦闘で王も負傷し、王位を王弟クロード・ジヘレーラに譲位し、現国王となり、王都をもともと彼が治めていたレムサに遷都して政を行っている。



 この一連の事態に対し、クロードはバルバロッサ商会に協力を求め、その見返りとして商会に対して多額の資金援助を行った。これにより、バルバロッサ商会が抱える傭兵団は一気に大きくなり、傭兵団の規模も大きくなっていた。また、バルバロッサ商会は王国からの要請により、王国の各地に支部を作り、魔物に対する防衛拠点としたのである。王国各地からの救援要請を受け、各地の魔物たちの討伐を行う。賛同する傭兵団も多く、バルバロッサ商会は拡大を続けている。


 一方、冒険者ギルドも王国からの依頼を受けて、王国中の冒険者に招集をかけ多数の冒険者が集まり、王国中のあちこちの町や村に冒険者の派遣が行われ、王国全土での魔物たちへの対処が行われている状況だった。


 この事態に対し、各国でも動きがあった。

 まず、大陸の北東に位置する帝国では、皇帝が病に倒れて後継者争いが起きており、混乱が続いていた。そんな中、魔物の軍勢が帝国の南にある山を越えて侵攻してきたのである。帝国の精鋭部隊が迎撃に向かうも、結果は惨敗。帝国軍は壊滅的な被害を受け、現在は撤退中である。

 しかし、一部の部隊はなんとか持ちこたえ、帝都まで戻り、そこで態勢を整えてから再度出撃するつもりらしい。だが、現時点で帝国は戦力的にかなり不利な状況となっている。

 次に西のエルキーポ聖王国では、聖教国正教会のトップであった教皇が亡くなったことにより、トップ不在の状況となった。その後、聖教会内で権力闘争が発生し、内乱状態に陥った。

 その結果、多くの神官・司祭が死亡しており、現在、聖教会は機能不全に陥っている。聖教会の力が大幅に落ちたため、魔物による被害が拡大しつつあった。

 最後に北西の国である共和国は、他国と比べれば比較的平和であったが、やはり魔物による襲撃があり、対応に追われている状態である。特に、西方の森には強力な魔物が多数生息しているという情報があるため、森に近い都市・街は危険にさらされていた。

 大陸中で魔物の大量発生が起こっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る