第57話 ロスベラ 01
ここは王国内ロスベラの町。王国内に魔物が出現し各地を蹂躙している中、未だ魔物の脅威から町が守られている。その町はずれにある古びた宿屋の一室。部屋の中には二人の男女がいた。一人は椅子に座っており名前はレイナ。もう一人はベッドの上に腰かけているノアである。
「それで? この町にきた目的は?」
レイナがそう言いながら不機嫌そうな顔を浮かべる。
「別に目的なんてないよ。ただ気ままに旅をしているだけさ」
「嘘おっしゃい!どうせ何か情報を掴んだんでしょ!」
「そんなことないって。本当だよ。まあ、強いて言うなら…… そうだね。でも、残念だけどもうここにはいないみたいだ」
ノアの言葉を聞いたレイナは
「何ですって!?」
「うーん。もしかするともう既にこの辺りを離れているかもしれないし… とりあえず、他の場所に行ってみようか」
「…わかったわ… ノア、もう3年になるのよ。あの時のことは…」
「うん、レイナ。ありがとう、わかってるよ。だけど…」
「うん、ごめん。わかってるの。あの時、私は本当に何の力にもなれなかった。あなたを連れて逃げる事しかできなかったんだもの」
「いいんだよ。もしレイナが一緒にいなかったら僕は死んでしまってただろうしね。それにしても、まさかこんなことになるとは思わなかった。もっと早くに気づくべきだったんだけど…」
「あなたのせいじゃないわ。私ももっとしっかりしていれば…」
「レイナは悪くないよ。僕もまだまだ未熟だったということさ。さて、そろそろ行こう。あまり長居したくないしね」
あの日から3年。俺はエレナとリリアナを探す旅を続けていた。あの事件の後、レイナが俺を助けてくれ、近くの村に運んでくれた。回復するまでしばらく村で過ごし、その後コルダラ城塞都市で事件の報告を行い、パリー隊長、アベルの死を家族に伝えるため二人の出身地を回り、リリアナの家族にも報告を行った。エレナについては王都では共和国に留学をしていることになっており、誰にも伝えられないままだ。
また王都派遣警察騎士団はその後の魔物の襲撃によって壊滅。騎士団所属の騎士もみな生死不明であり、俺も移動中に死亡したことになっているのではないかと思う。確認はしていない、するつもりもない。
俺は3年前に死ぬべきだった。アベルやパリー隊長と共に。しかし生き残った。生き残ってしまった。で、あるなら、エレナとリリアナを探すしかない。そして、きっと見つけ出す。そのために騎士団員という身分は邪魔でしかなかった。俺は俺の目的のために動く。
そんなことを考えながらレイナと宿を出ると、そのまま町の外へ出て行った。
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