第53話 レムサ領領内の森 10
蜘蛛の魔獣はまずパリーを喰おうと口を開けて近寄ってくる。
二人ともなんとかしようと思うが、体は動かず声すら出せない状態になっている。
目の前の蜘蛛の口が開き、糸が飛び出してきそうになった瞬間、突然蜘蛛の頭部が爆発した。
ノアの火魔法が直撃したのだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
怒りに満ちたノアが抜刀し駆け寄ってくる。
ノアの体はなぜか薄く青く光っているように見える。
魔獣は全身を蜘蛛の姿に戻すと糸を吐き、アベルとパリーを絡め取ると、そのまま自分の体に取り込もうとしている。
「させるかよ!」
蜘蛛は体を震わせると、ノアに向かって突進してくる。
ノアはその攻撃を避ける。
蜘蛛の魔獣は一瞬動きを止めると、次の瞬間言い放つ。
「グギ… ホー… ゾステファノス…うまくやったか…キサマは… そうか… キサマは…生かして…ア…アブ…」
そういうとエレナの時と同じように黒いモヤが周りに広がっていく。
「どういう意味だ!? エレナは? リリアナは?? おい!! 答えろ!!」
ノアは今にも怒りで爆発しそうだ。
蜘蛛はノアの言葉を聞かず、アベルとパリーに近づき
「お前らは…… ここで……死ね!!」
と叫ぶと二人に襲い掛かる。
「くそ!!」
一気に蜘蛛に近づこうとするが黒いモヤが邪魔をする。自身の青い光がモヤを打ち消しているがそれ以上に黒いモヤが行く手を阻む。
「アベル! パリー隊長!」
ノアが叫ぶ!!
刹那!
蜘蛛の爪のような前足が振り下ろされる!
ノアの目の前で、親友アベルとパリー隊長の体に爪が突き刺さる!
「「ぐぁ!?」」
っと、同時に叫び声を上げる。
蜘蛛の魔獣は勝ち誇ったかのように、アベルとパリーを足で踏みつけると、ニヤリと笑いながら言う。
「これで……終わりだ……。」
直後、蜘蛛の腹部から炎が上がる。
「ガァアア!! なんだ??」
突然の痛みに驚きながら蜘蛛は腹を確認する。するとそこには、アベルが放った魔法が腹部で炎を上げている。
うわああぁぁぁぁぁ!!!!!
ノアは…
考えられなかった。
…なぜ
なぜ…
…どうして…
そんな言葉だけが頭の中をグルグル回っている。
(俺は何をしているんだ!)
アベルとパリーがやられたことに、ただ呆然としていた。アベル達が戦っていた時に何もできなかった。
なぜこの場に戻った?
なんのために戻った?
自分のせいで二人が死んでしまった。
自分がもっと強ければ、あの時のように…
あの時??
その時…… 何かを思い出しそうになる…… 記憶の奥底にある…… 思い出せない…… でも…… 大切な…… 絶対に忘れてはいけない……
ノアは考える。
アベル達はもう助からない…… なら…… せめて……
せめて…… あいつだけは……
そう思い、ノアは蜘蛛に斬りかかり激しい応酬が始まる。
戦いの中、蜘蛛の攻撃を避けきれずに左腕に攻撃を受けてしまい、そのまま地面に叩きつけられる。
意識を失いそうな中
そうだ…
思い出した…
あれは
エレナと出会った日だ…
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