第54話 レムサ領領内の森 11

 思い出した…

 エレナと出会った日だ…



 …アフム…


 …アフム…


 アフム!!!!


 今が…


 今がその時だ!!


 力を渡せ!!!


 アフム!!!


 ノアの体が輝き出す。その光はまるで炎のように揺らめいている。

 蜘蛛はノアの体の変化を見て、警戒しながら様子を伺っている。

 ノアの頭の中に、記憶が流れる。エレナとの出会いから始まり騎士学校で旅をして事件を解決したこと、過ごした日々が走馬灯のように流れていく。そして、最後に見た光景…… アベルが死にかけたときの出来事だ。


 そうだ……

 

  俺が……


  俺が!!


  ノアは立ち上がり、蜘蛛に向かって剣を構える。蜘蛛もノアの様子が変わったことに気づき戦闘態勢に入る。ノアは静かに息を整え、蜘蛛の動きに集中する。


 次の瞬間、ノアの姿が消える。


 そして、気がつくと蜘蛛の目の前に現れる。蜘蛛は一瞬で距離を詰められ驚くが、すぐに反応して腕を振り回す。しかし、ノアはその攻撃を難なく避けて懐に飛び込むと、一閃を放つ。蜘蛛は腹部を斬られるが、構わずノアに向かって糸を吐きだす。ノアはそれを回避し距離を取る。


 ノアは蜘蛛の傷を見る。先ほどまでと明らかに手ごたえが違う。蜘蛛の体は黒いモヤと硬い外骨格で覆われていて、並大抵の力では傷をつけることはできない。だが、今のノアの一撃で蜘蛛の外殻に亀裂が入っている。


 これならいける!


 そう確信する。


 今度はこちらから攻める!


 そう思いノアは駆け出し蜘蛛に攻撃を仕掛けるが、蜘蛛は攻撃を回避し反撃してくる。お互い一歩も引かない攻防が続く。


 ノアは今まで感じたことの無い高揚感に包まれていた。


 自分と相手の動きがいつもよりゆっくりに感じる。


 相手の動きがよく見える。




 蜘蛛の魔獣は焦りを感じ始めていた。


 なぜだ?

 

  なぜこんなにも強い?


 こいつはまだ…

 

 それだけではない。

 速さについて来ている。


 蜘蛛の魔獣はノアの実力に驚愕している。このままでは不味いと判断すると、蜘蛛はノアの隙をついて上空へと飛び上がる。


 …マズイ …マズイ …マズイ!!


 聞いていなかったぞ、ゾステファノスめ!!


 こんなに早く覚醒するとは!!


 逃げなければ…


 ここから、一刻も早く!!


 蜘蛛は何とか逃げ出そうとする。しかし、その行動は遅すぎた。ノアが跳躍し、空中にいる蜘蛛に追いつくと、蜘蛛の腹部に強烈な蹴りを入れる。


 バキィ!!


 という音と共に、蜘蛛の腹部が砕け散る! そして、蜘蛛はそのまま地上に落ちて行く。落下していく蜘蛛を追い、ノアも落ちていく。蜘蛛はノアの攻撃を避けることもできずまともに食らい地面に激突する。


 ノアは蜘蛛の上に着地すると、止めを刺そうと剣を振り上げる。


 まずい!!


 この状態では避けられん!!

 

 くそ!!


 こうなれば、最後の手段だ!!


 蜘蛛は最後の力を使い、口から大量の毒液を吐き出す。その量は尋常ではなく、まるで滝のように地面を流れていく。ノアは突然の行動に驚きながら、蜘蛛から離れようとする。


 その時、ノアの体が熱くなり、青く光り始める。

 

ノアの思考は不明瞭になってくる。


 ……アフムか?

 

 アフムが力を貸してくれているのか?


 ノアは青い光の渦に巻き込まれる。


 失っていく意識の中で、蜘蛛が光の炎で焼かれていく姿が見えた…






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お読みいただきありがとうございます。

2章終了となります。

ここから3章は3年後の世界になります。

お付き合いいただけると幸いです。


面白そう! と思ったら★や❤、コメントをいただけると頑張れます!!

引き続きよろしくお願いします!!

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