第50話 レムサ領領内の森 07
あああああぁぁぁぁ!?!?!?!
突然、エレナの絶叫が響き渡る。その声を聞き、リリアナたちは振り返るとそこには倒れているエレナの姿があった。急いで駆け寄ると、どうやら気を失っているようだ。ノアが焦っていると、リリアナがエレナを抱きかかえて、安全な場所に移動させるが、新たに人型になった黒いモヤがリリアナとエレナを追う。
二人がいなくなったことで戦闘は非常に不利な状況だ。次々と襲ってくる攻撃を避け続け、隙を見つけては魔法を放つのだが、その攻撃もあまり効果がない。さらに悪いことにパリーも先ほどの攻撃を受けて負傷してしまっている。パリーの魔法でなんとか持ちこたえているが、時間の問題だろう。
このままでは全滅は避けられない。
何か打開策はないのか必死に考えるが、思いつかない。
蜘蛛の魔物は爪のような前足を振り上げ俺たちに襲い掛かる。
「うわぁ!!」
俺は情けない悲鳴を上げながら転がるようにして避ける。
そしてすぐに起き上がり、武器を構える。
数分後…
「ノア、パリー隊長とエレナを連れて逃げてくれ」
アベルの言葉に反論しようとするが、その前に言葉を続ける。
「いいか、今この状況で生き残るにはこの方法しかない。」
アベルの真剣な表情を見て、俺は察した。
「分かった……。 必ず戻ってくれ……」
俺は涙を浮かべながら答えるしかなかった。
「ああ、約束する。俺があいつの動きを止める。その隙にみんなを頼む」
「分かった! 絶対にみんなを死なせない」
「頼むぞ!」
そう言うと、アベルは蜘蛛の魔物に向かっていく。
その間も蜘蛛の攻撃が飛んでくる。
アベルは素早く避けると、そのまま蜘蛛に向かって走り出した。
アベルは蜘蛛に突っ込む。
ノアはその姿を視界にとらえながらパリー隊長の下に向かう。蜘蛛にやられ、かなり苦しそうだ。
「すまんな、不甲斐ない…。が、私も最後にやるべきことがある…。 アベルにだけいい格好はさせられないだろう…。ノア、リリアナとエレナのことだけを考えて行動しろ。ここからこの場所は私とアベルの戦場だ…」
「いや、そんなわけにはいかないですよ!! 二人が残るなら俺も残ります!!」
「見ろ、ノア。もう人型の魔獣がエレナの所にまで迫っている。考えている時間はない。すぐに二人の下に向かえ!!」
そういうとパリー隊長も身体を引きずりながら蜘蛛に向かっていく。
俺は…
「隊長! すぐに戻りますから!!」
それだけ言って、エレナの下に走り出した。
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