第48話 レムサ領領内の森 05

 一方、ノアとアベルは森の中の気配に集中していた。パリーの指示でいったん踏みとどまったあと、三人で目線を合わせると一気に気配に近づいた。


 森の中に入ると、そこには大きな狼のような生物がいた。

 体長3メートルくらいはあるだろうか?

 全身真っ黒で目は赤く爛々と輝いている。口からは鋭い牙が見え隠れしていた。

 その姿を見て、三人とも身構える。パリーは剣に手をかけ、いつでも抜ける体制だ。ノアは長剣を抜き、アベルは両手に剣を構える。


 ノアが先頭に立ち、狼に向かって走り出す。そして、そのまま剣を振り下ろす。


 ガキンッ!!!


 ノアの攻撃に気づいたのか、狼が前足を上げガードをする。

 ノアはその前足を弾き返すと一旦後ろに下がる。

 アベルも後ろから飛びかかるようにして斬りつけるがそれも弾かれる。

 アベルの攻撃を防いだ瞬間を狙ってノアが再び間合いに入り込み、横薙ぎに剣を振るう。

 しかし、これも防御されてしまう。

 その隙を逃すまいとアベルも再び剣を構え直し突っ込む。

 二撃目を防ごうとした狼の前足の膝を狙い、振り上げる。


 ギィン!!!


 鈍い音と共に狼の体勢が崩れる。

 その隙を見逃さず、ノアが突きを入れる。

 それは見事に腹部に刺さり、狼の動きを止める。

 アベルも反対側の肩口に剣を突き刺し、動けないように固定した。

 二人の攻撃を受けて、初めて狼が声を上げる。


 ウォォーーン


 森に響き渡るような声だった。

 ノアとアベルは油断することなく、すぐに次の行動に移れるように警戒を続ける。

 しかし、しばらく経っても何も起こらない。二人は顔を見合わせ、どうするか相談しようとした時、突然目の前の狼の姿が消えた。

 二人は驚いて周りを見るが、どこにも姿がない。

 すると、パリーが叫び声をあげる。


【光よ、敵を貫け!】


 パリーの視線を追うと、上空に何かいるようだ。ノアとアベルはすぐにパリーの元へと移動する。

 パリーが見つめている方向に目を向けると、空には先ほどの狼が浮かんでいた。

 その姿を見て、全員が驚く。


【風よ、我が意に従い、あの者を撃ち落とせ!!】


 アベルがすかさず魔法を放つ。

 風の刃が一直線に狼に向かっていく。

 しかしその攻撃はあっさりと避けられてしまう。

 避けたと思ったら、今度は急降下してこちらに向かってきた。

 その姿はまさに獲物を狙う猛禽類のように素早い動きをしていた。


【光よ、我が意に従い、我が身を守れ!】


 パリーが魔法を唱えると、前に光の壁が現れる。


 狼は何度か襲い掛かってくるが、三人はそれに合わせて反撃を行う。しかし狼に難なくかわされてしまいなかなか有効打を与えることができないでいた。


 悔しそうに唇を噛むアベルの姿が見える。


 その後、何度か攻撃を仕掛けるが、狼は再び空中に飛び、森の中に消えていった。


 森の中ではリリアナたちが奮闘している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る