第46話 レムサ領領内の森 03
「特別……」
「はい。このオーガは何らかの原因で変異したオーガでして、通常のオーガよりも強い力を持っています。さらに黒いモヤのようなものを纏っているのが特徴です。この黒いモヤは普通の攻撃では効果が薄く、魔法も効きが悪くなっています。そんな特殊な力を持ったオーガのことを特殊個体と呼んでいます。そして、その強さは通常のオーガの数倍になっているようです」
レイナは驚きを隠せない様子で質問をした。
「そ、そんなに強いのですか!?」
「はい。我々はコルダラ城塞都市からレムサに向かっているところなのですが、通常の魔物に紛れ、黒いモヤを纏った魔物が出てきています」
「その数は多くないですけどね」
「そう、ですか……」
レイナは少し考える素振りを見せると、
「それならば、その黒いモヤを消す方法は無いのですか?」
「残念ながらそれは今のところ見つかっていません…」
と悔しそうにこちらを見つめ、話始める。
「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね。隊長、よろしいですか?」
と一番年長に見える女性に声をかける。
「失礼した。私は、パリー・フォン・アルフレット、コルダラ城塞都市の騎士。今まであなたと話していたのがノア・ギマーラ。隣の緑髪がアベルファナ・シラーニ。そしてこちらがリリアナワ・ザイデル。三名とも王都派遣警察騎士だ。そしてあなたの隣にいるのがエレナ。三名についている従者だ。コルダラ城塞都市からレムサに向かう途中なんだが、戦闘音が聞こえ、まずそうだったので手を出させてもらった」
きちんと礼をとって挨拶をされ、全員の紹介が終わる。こちらも、冒険者だと伝え、今回のお礼を改めて伝える。
その後、レイナも同行してレムサに向かうことにする。馬車まで戻りながらお互いの情報を交換し、レムサに向かう道中にも黒いモヤを纏った魔物がいて、近隣の住民に襲いかかってくることもあるということだった。レイナは自分の力の無さを悔やみ、唇を強く噛んだ。
一行は、再び移動を開始する。先ほどまでとは違い、ゆっくりとした足取りでの移動になった。
レイナとエレナは御者の席に座り、馬車を走らせている。レイナの横に座っていたリリアナが話しかけてきた。
その表情はとても真剣なものになっていて、何か重要なことを伝えたいようだ。
「レイナさん、お話があります」
「はい?」
「これからお話しすることは絶対に口外しないでください。約束できますか?」
「ええ、もちろん」
「わかりました。実は、私たちは、ある人物を追っています」
「追って……?」
「ええ、私たちが追っていたのはある女性。名はカミラと言います。彼女は現在、貴族屋敷に滞在していると思われます。最近、レムサの街で何か変わったことが起こっていませんか?」
「えっ!? 」
「何か心当たりはありませんか?」
「……」
レイナが言葉を失っていると、
「どうしました?」
「い、いえ、何でもありません。確かに私の知人がレムサで調査をしています。私も詳しくは聞いていないのですが…」
「そのお話、聞かせてもらえませんか?」
「はい。私の知り合いが言うには、ここ数週間の間に急に人が消えたり、亡くなったりする事件が多発しているらしいんです。それも、かなりの数の方が亡くなっているみたいで……ただ、事件ということもなくて…私は考えすぎだって言ったんです…」
「そうですか……やはり…… ありがとうございました。この話は内密にしておいてくださいね」
「わ、分かりました」
レイナは返事をしながら、先ほどの話を頭の中で整理していた。
(まさか、タティアが言っていたことが本当だったなんて……)
レイナが考え込んでいる間に、リリアナたちは会話を続けていた。
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