第44話 レムサ領領内の森 01
――レムサ領領内の森の奥深くにて――
一人の女性が木々の間を駆け抜けていく。彼女は森の中をまるで平地を走っているかのように軽快に進む。凛としたその表情はとても美しい。
その女性の名はレイナという。
彼女は冒険者ギルドで依頼を受けていた。その依頼とは、森にいるモンスターの討伐。その対象は…… オーガだ。その数は一体のみ。
だが、油断はできない。
オーガは強い。
単体でも人間では歯が立たない相手だ。その強さはレベル20程度と言われている。個体によって強さはレベル30を超えるものもいるとも噂されている。
そんな存在を相手にするのは無謀と言える。だが、それでもこの女性は戦うことを選んだ。戦い続けることで多くの人々を救うことができると信じている。それが彼女の戦いであり生きる意味でもある。
そして、ついにオーガを視界にとらえた。その体は筋肉質ではあるが、普通の成人男性よりも少し大きいくらいだ。その腕には丸太のような太さの棍棒が握られている。武器だけでも十分に脅威だ。
そしてその体からは黒いオーラのようなものが立ち上っており、明らかに普通ではなかった。
その姿を確認したレイナは一気に距離を詰めると、手に持った剣を振り下ろす。オーガはそれを難なく受け止めるが、レイナの攻撃は止まらない。 次々と攻撃を繰り出す。しかし、その攻撃はことごとく防がれてしまう。
「くっ!」
レイナは一旦距離を取ると、息を整える。
「やっぱり硬いわね……」
その言葉の通り、その皮膚は鉄のように硬く、並みの斬撃は通用しない。
さらに、その力も並外れており、まともに打ち合うことすらできない
「でも、負けない!!」
再び斬りかかる。
今度は相手の攻撃を受け流し、隙を見つけて反撃に転じる。
「はぁあああっ!!!」
渾身の一撃を放つ。
だが、その攻撃はオーガによって受け止められてしまった。
「ぐぅうっ……」
グォオオオッ!!!
そのまま押し返される。
体勢を崩したところに追撃が来る。
それをなんとか回避すると、バックステップで間合いを取り直す。
レイナは呼吸を整え、次の一手を考える。
グルァアアッ!!
思考を遮るようにオーガが雄叫びを上げる。
「な、何!?」
あまりの声量に耳鳴りがする。
「い、いや……」
その声を聞いた瞬間、体に悪寒が走る。
「……ッ!!?」
全身に鳥肌が立ち、体が硬直する。
「あ…… あ……」
グゥウウッ……
このオーガは……
グォオオオン
特殊個体……?
グォオオオオオオオ!!!!
「あああああああああ!!!!」
レイナの絶叫が森の中へと響き渡ったその時、一気に近づいてくる影があった。
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