第43話 レムサ 07
―――バルバロッサ・ドゥプレ子爵のレムサ領屋敷内にて―――
夜遅く、屋敷に一人の客人が訪れた。
男は全身黒ずくめで顔を隠しており、怪しい雰囲気を放っていた。
バルバロッサ・ドゥプレ子爵の部屋の前に立つと、ノックもせずに扉を開ける。
そこには書類に目を通すバルバロッサの姿があった。
突然の来訪者に驚きながらも、なんとか冷静を装いつつ声をかける。
その男に見覚えはない。
しかし、なぜこの時間なのだ? 普通なら事前に知らせがくるはずなのだが……カーミラからの使者はいつもこのようにやってくる、特に重要な案件の場合には。
バルバロッサは少し不審に思いつつも用件を聞くことにした。
内容はもうすぐ城塞都市の騎士団がレムサ領に訪れる、その対応についてバルバロッサに対処せよ、というものであった。
(ふむ…王弟陛下を引き込んでいるものの、やはり王家に警戒されておるのか…ここは私たち…いや、私の力を見せつけてやらねばならんな)
「わかった。すぐに準備に取りかかろう」
「はい、よろしくお願いいたします…」
それだけ伝えると、その使者は音もなくその場を後にする。
「くっくっ……」
一人になった部屋の中でバルバロッサは不敵な笑みを浮かべる。
その笑みにはこれから起こるであろう出来事を想像しての喜びが含まれていた。そう、彼はこの国を自分のものにしようと動き出しているのだ。王弟の思いなど知ったことではない。
カーミラの思惑通り、彼はすでにカーミラの傀儡となっていた。
自分の目的のために、自分の思うがままに事を進める。
そのことに疑問を持つことも、後悔することもない。
もはや彼の頭にあるのはこの国のことではなく、自分がこの国のトップになるということだけだった。
カーミラの力を使えばそれも夢ではない。
カーミラが自分をこの領に私を送り込んだのもそのためだろう。
彼女の狙いはおそらく…… バルバロッサはそこまで考えると、頭を切り替える。
今はそんなことを考えている暇はなかった。
まずは目の前のことを片付けなくては……。
(そういえば……)
バルバロッサは先ほどの黒装束の男の姿を思い浮かべ、
(あの男と同じような力を持つものをカーミラから預かっておったな…)
そう考え、部下に討伐隊の編成を命じる。
(まあよい……。どちらにせよ、私の邪魔をするのであれば容赦はせん)
その瞳には暗く濁っていた。
その瞳を見た者はきっと恐怖で震え上がるに違いない。
それほどまでに深い闇をバルバロッサはその身にまとっていた……。
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