第41話 レムサ 05
新しく発売された魔道具は飛ぶように売れた。
カーミラはまず、完成させた魔道具を王都に献上させた。そこから公爵につながりがあるものだけに販売し、さらに公爵にすり寄ってくるものなどを選別し販売先を決めていった。
そうして、ある程度まとまった数が売れ始めた頃、今度は一般の貴族向けにも販売することを考えたのだ。さらにそれが行き渡った段階で一般の国民向けにも魔道具の質を落として販売する。
この目論見はあたり、クロード・ジヘレーラ公爵にもバルバロッサ・ドゥプレ子爵にも莫大な資産と権力をもたらした。公爵、子爵ともここまでうまく事が運んだのはカーミラのおかげだとわかっており、両名ともカーミラ抜きでは物事が決められないほどカーミラに依存している。
そしてそのおこぼれをもらえる貴族達もまた、カーミラには感謝している。
権力が大きくなるとそれに比例するように公爵に近づいてくる者も増えていく。その有象無象の輩たちも、三者と会談を終えると次第に三者に、いやカーミラに傾倒していく。
カーミラは国民への販売が開始される頃から公爵の館にこもることが多くなり、最近はほとんど外に顔を出すことは無くなってきた。
公爵も同じように一日中出てくることがなく屋敷にこもっている状態だ。子爵も公爵家に頻繁に訪れ、3名は何かしらを密談することが多い。公爵邸の使用人たちも最初にお茶を提供するとよほどのことがに限り部屋に近づかないように言明されており、何が行われているのかは不明だった。
ただ、そんな状況でも仕事に支障をきたしていないところを見ると、カーミラの能力の高さがうかがえる。この国で1番大きな力を持つと言われるまでになった貴族の家を取り仕切る、それがカーミラなのだ。
「クロード様もバルバロッサ様も、ずいぶんと力をお付けになられて、私は本当に幸せ者です」
うっすら赤く、怪しく光る瞳には何かにすがるように跪いている二人の貴族の姿が写っている。
「でも、まだ足りない……もっと欲しいのです。私達の野望のために……」
その呟きを二人の貴族はうつろな目をして頷きながら聞いている。
まるで操り人形のように……。
(ここまでは計画通り。あと少し…)
カーミラの顔から笑みが消えることはない。
全ては自分が思い描いた通りに進んでいる。
この調子ならもうすぐ自分の望みが叶う。
そう信じて疑わないカーミラだった。
(何も知らないこの国にもうすぐ真実の時がやってくるわ)
その日が来るのを待ち遠しいと思いながらも、今はまだその時ではないと自分に言い聞かせ、彼女はいつも通り二人に話しかける。
「私は本当にあなたたちお二人に感謝しているのです。今の私があるのはお二人のおかげ…さあ、こちらに来て私を満足させてください…」
カーミラが二人を操る術を持っていることは間違いないだろう。
しかし、なぜこんなことをするのか…
それは本人にしかわからない。
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