第39話 コルダラ城塞都市 06
翌日、俺とアベルは侍女の情報を得るため、貴族の居住地区に向かう。
昨日の話を聞く限りだと、その女性は屋敷の侍女ということなので貴族の邸宅内にいるはずだ。貴族の屋敷に出入りしている商人などからモンテ便商会のマーチスといい仲になっている女性についての噂を集めてみよう。
数件の商会を回ったところ
「すみません、少しよろしいですか?」
俺はとある商会の男に声をかける。
「なんだい?」
「実は人を探しておりまして。モンテ便商会で働いていた男性といい仲になったような女性なんですが、ご存知ありませんか?」
「ふむ、モンテ便商会といえば…ああ、子爵さまのところの。ちょっと待っててよ」
男は近くの建物に入っていき、数分後戻ってきた。
「モンテ便商会で働いていたという人はよくわからないが、子爵さまの所に勤めていた女性には心当たりがあるよ」
「え?! 本当ですか!! ありがとうございます。」
「うん、その子は確か…カ…カミラ! って言ってたな。侍女は侍女なんだが…今はもうその屋敷にはいないねえ」
男はそういうとその侍女について話し始める。
「はじめはお嬢様の侍女だったんだ。」
「はじめは?」
俺は疑問を口に出す。
「ああ、その侍女さんはお嬢さんの病気を治してな。それから旦那様の仕事も手伝うことになったんだよ。それで、その侍女は別のお屋敷に移ったわけだ。子爵さまのことだから、良いところに移ったんじゃないかねえ。」
「なるほど、それで、彼女、カミラさんは今どこにいるかわかりますか?」
「んー、そこまではわかんないけど、この領にはいないかもねえ。」
有力な情報を手に入れることができた。
その後、カミラという侍女とマーチムさんのことについていろいろと尋ねた。
その中で少し気になる話が出てきた。
その子爵はこれまでもいろいろな問題を起こしていたらしく、貴族との付き合いのある商人たちはできるだけ子爵と波風を立てないよう注意しながら取引をしていたらしい。表立ってはいないが裏でかなりあくどいことをしていたようだ。
しかし最近になって急におとなしくなり、悪事がばれないように必死で隠しているようだという。
マーチムさんに関係のあることだろうか?
しかし、これまで気にしていなかったものをいまさら気にしても仕方がない気もする。そして最後に、カミラという女性が移った屋敷についても教えてくれた。
どうやら、子爵は最近レムサの街に商会を立ち上げたらしいというのだ。
そしてそこではなんと魔石を使用した生活道具を作成販売しているというのだ。
なんでも、公爵家から購入した魔石を加工して作り出したらしい。
魔石は、鉱山などで発掘される天然物と、魔物が体内に保有しているものが存在する。そのどちらも、魔法を使う際に使用する。
これまで魔石を使用した魔道具は研究こそ進んでいるものの実用化には至っていないというのが定説だ。これが本当の話なら大変なことだ。
レムサの領主は以前から魔石の活用を模索していたようで、今回の件でそれに成功したようだ。
この件については、パリー隊長に報告し、できるだけ早くレムサの街に向かうことにしよう。
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