第38話 コルダラ城塞都市 05
どうやら、マーチムが想いを寄せている相手は王都の商人ではないらしく、どこかのお屋敷に侍女として仕えている貴族籍の人だったらしい。侍女になっているとはいえそもそも身分違いの恋であり、あきらめるように父親が説得し、最近その話をしなくなったのですっかりあきらめたものだと思っていたらしく、出かけるようになったのは新しい恋人でも見つけようとしていたのだろうと考えていたらしい。
アベルは、俺に耳打ちしてくる。
「なあ、ノア、これは……」
「ああ、多分だけどね。マーチムはその人に会ってたんじゃないかと思う」
俺は小声で返事をした。きっとマーチムは想い人と会っていたんだろう。そして事件か事故に巻き込まれた。
「だよなあ、やっぱり。俺もそんな気がする」
アベルも同じ意見のようだ。
「ああ、でもどうやって調べようか?」
続けてこの件を引き続き調べるのかを確認してくる。
「うーん、とりあえずもう少し情報を集めてみよう」
この件、どうにも気にかかる。
「わかった」
アベルも同意してくれたようなので、他の従業員たちにも話を聞いてみることにする。
何人かに声をかけると、ある店員が店の裏口から出て行くマーチム様を見かけたような気がすると話しはじめた。
「その時は声をかけなかったのですが、しばらくしたら戻ってきていたので声をかけたのですが、特に用事はないと言われてしまったんです。ただ、先週くらいから急に元気がなくなったように見えまして…… それで、先ほどの件で思い出したのでお話しした次第です」
「ありがとうございます。ちなみに、マーチムさんがどこに行っていたとかは聞いていませんか? 例えば、女性に会いに行くと言って出て行ったとか?」
「あ! そういえば、マーチム様が出かけられる際、女性がいたと思います」
「本当ですか!? それはどこの誰でしょうか!」
「えっとですね、確か、あの、名前は忘れてしまいましたが、貴族の屋敷の侍女だったと記憶しています。私は、何度か見たことがあるだけなので詳しくは知らないですけど。ただ、最近見ないなって思っていたのですよ。そっか、あれは彼女とどこかに出かけられるところだったのか…」
やはり、マーチムは彼女に会うために出かけていたようだ。
貴族の屋敷の侍女なら、探せば見つかるかもしれない。
俺とアベルは捜査隊本部に戻り、モンテ便商会で聞いた話を捜査隊に伝えた。
捜査隊のメンバーにも話を聞き、すぐにでもその貴族を調べたいという話になる。
そこで、俺は捜査隊の面々に、調査が終わり次第捜査を始めると伝えた上で、マーチムの失踪に関して何かしらの情報を掴んだら教えて欲しいとお願いする。
俺達は一旦今日の調査を終え、宿屋に戻ることにした。
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