第30話 レムサ 01
レムサは人口約3万人、王都から東に約200Kmに位置する街道沿いの都市で、代々王族であるジヘレーラ公爵家が治めている。この領は東の山脈にあるソイストの町から産出される魔石の集積地として栄え、南西には広大な平野が広がり、主要産業は魔石の輸出と麦の生産であり、王国の倉庫と呼ばれている。また国の東と北に抜ける街道の合流地点でもあり常に人の往来でにぎわっている要衝である。
そのレムサ領城内にある執務室に一人の男が座っていた。
彼は、この国の国王の弟でもあった。名をクロード・ジヘレーラという。
クロードはこの国が嫌いであった。
先々代の王の時代より貴族による政治体制が強化されている。王族の力を削ぎ落とすためだ。それまで王族の力だけで政を行ってきたが徐々に貴族が力をつけてきたのだ。
現在の王は世襲制であるため、王が死ねば次の王が選ばれることになる。貴族たちは、それではいつまでたっても王家から権力を奪うことができない。そのため、王家の血を薄めるために子供を作ったり養子を迎えたりと様々な手段を使った。
結果、王家の血筋は薄くなり、力も衰えている。
このままいけば近い将来王家はなくなり、また別の貴族によって支配されるだろう。
(そうなれば、民たちはどうなる?)
今の貴族たちは、自分たちさえ良ければそれでいいと思っている。自分たちの利益のためなら何でもやる。それがたとえ非人道的なことでも平気で行うような連中ばかりだ。
そんな奴らに任せられるか!
私は絶対に許さない。
私が変えてみせる。
今はまだ力が足りない。
それにしても……。
クロードは目の前にある資料を見た。そこには、最近巷で噂されているとある人物が書かれていた。
ドゥプレ子爵は、ここ数年で頭角を現してきた人物らしい。最近、領地経営において成果を上げているとのことだ。全く忌々しい。
彼が治めているのは、我が国の領土の最東端に位置する辺境のグラッズレイである。本来であれば何の価値もない土地なのだが、彼の手腕により領内の整備が進み、今では立派な街として栄えているということだ。
今までそのような報告はなかったはずだが見違えるほどの発展らしい。
おそらく、ドゥプレ子爵の下に有能な者が現れたかどこかほかの貴族の協力があるのだろう。
そんな面白くない報告を受けてから数か月後、ドゥプレ子爵側から接触があった。ぜひ一度会って話がしたいということだった。
当然断ろうとしたが、領地の発展の件やどの貴族が裏で糸を引いているのかも気になり会ってみることにした。
そして、そこで見たものは衝撃的だった。
ドゥプレ子爵は見た目はどこにでもいる普通の男だったのだが、後ろに控えていた秘書は非常に美しかった。
ピンクの清楚なドレスに、ロングの銀髪。そして何よりも瞳の色が薄く赤くみえる。じっと見ると赤く見えていたのは気のせいなのか瞳の色は明るい黒色だった。
しかし、私は彼女をみて思う…
この女は普通じゃない。何か底知れぬものを感じた。
気になるのだ。彼女の容姿、動き、声そして瞳が。
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